基礎知識・入門編⑤ 法定相続人って誰?あなたの家族構成で見る相続人の範囲と順位
◆◇「法定相続人」と「法定相続分」とは◇◆
「財産を相続できるのは家族だから、話し合えばいい」と考えていませんか?
実は、民法で、誰が、そしてどれだけの割合で財産を相続する権利を持つか、厳格なルールが定められています。
これが「法定相続人」と「法定相続分」のルールです。
このルールを正確に理解しておくことは、遺言書を作成する際の土台となるだけでなく、
いざ相続が発生したときに「誰と話し合えばいいのか」を明確にし、
トラブル(争族)を未然に防ぐ上で極めて重要です。
法定相続人:配偶者と血族相続人のルール
法定相続人には、「常に相続人となる人」と「順位によって相続人になる人」の2種類がいます。
1. 常に相続人となる人:配偶者(夫または妻)
亡くなった方(被相続人)に配偶者がいる場合、その配偶者は常に法定相続人となります。
ただし、戸籍上の正式な婚姻関係にあることが条件です。
内縁の妻や事実婚のパートナーは、原則として法定相続人にはなれません。
2. 血族相続人:順位で決まる親族
配偶者以外の親族(血族相続人)には、以下の通り順位が定められており、前の順位の人が一人でもいる場合、
後の順位の人は相続人にはなれません。
◎順位相続人の範囲
第1順位 亡くなった方の子(子が既に亡くなっている場合は孫など直系卑属)
第2順位 第1順位がいない場合、亡くなった方の直系尊属(父母、祖父母)
第3順位 第1順位も第2順位もいない場合、亡くなった方の兄弟姉妹(兄弟姉妹が既に亡くなっている場合は甥・姪)
家族構成別!誰が相続人になるか具体例
この順位のルールに基づき、配偶者と血族相続人がどのように組み合わされるのかを見てみましょう。
◎配偶者と子⇒配偶者と子(第1順位)=配偶者:1/2、子:1/2(子の人数で均等分割)
◎配偶者と父母⇒配偶者と父母(第2順位)=配偶者:2/3、父母:1/3(父母の間で均等分割)
◎配偶者と兄弟姉妹⇒配偶者と兄弟姉妹(第3順位)=配偶者:3/4、兄弟姉妹:1/4(兄弟姉妹の間で均等分割)
◎子のみ⇒子(第1順位)のみ=子:全員で100%(子の人数で均等分割)
◎配偶者のみ⇒配偶者のみ=配偶者:100%
知っておくべき例外ルール:「代襲相続」
第1順位の「子」や第3順位の「兄弟姉妹」が、被相続人より先に亡くなっていた場合、
その亡くなった子や兄弟姉妹の”子ども(孫や甥・姪)”が、代わりに相続する権利を引き継ぎます。
これを「代襲相続(だいしゅうそうぞく)」と言います。
特に、孫による代襲相続は、何世代でも下へ下へと続きます(再代襲)。
一方で、兄弟姉妹の代襲相続は、甥・姪の世代で一回限りと定められています。
まとめ:法定相続人を知る重要性
自分の家族構成における法定相続人を確定させることは、相続手続きの最初の一歩です。
遺言書がない場合: 法定相続人全員で遺産分割協議を行う必要があります。一人でも欠けていると、その話し合いは無効になります。
遺言書がある場合: 法定相続人には「遺留分」(最低限相続できる権利)があります。遺留分を侵害する遺言書は、トラブルの元になります。
自分の家族構成に照らし合わせ、「誰が相続人になるのか」を正確に把握しておくことが、将来の円満な相続への最も確実な備えとなるでしょう。


