基礎知識・入門編⑨ 生前贈与と相続、どっちが得?税制の基本を比較解説

◆◇生前譲与と相続について◇◆

大切な財産を次の世代へ引き継ぐ際、「生前贈与で少しずつ渡すべきか、それとも相続まで待つべきか?」は、誰もが悩むテーマです。どちらが得になるかは、ご家庭の財産規模や、贈与を行う方の意図によって異なります。
ここでは、贈与税と相続税の基本的な仕組みを比較し、税制面から見たメリット・デメリットを解説します。

1. 相続税の基本:「全体から控除を引いた後に課税」

相続税は、故人(被相続人)のすべての財産が対象となります。
課税の仕組み: 遺産総額から基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を差し引いた後の金額に対して課税されます。
税率: 遺産額が大きくなるほど税率が高くなる累進課税です。最高税率は55%です。
メリット: 基礎控除額が大きいため、遺産総額が少なければ非課税になります。また、配偶者控除や小規模宅地等の特例など、大きな節税特例が利用できます。

2. 生前贈与の基本:「もらう人ごとにかかる税金」

生前贈与は、財産をもらった人(受贈者)に対して課税されます。
課税の仕組み: 贈与を受けた財産が、年間110万円の**基礎控除(暦年課税の非課税枠)**を超えた場合に課税されます。
税率: 相続税よりも高い税率で課税される場合が多く、特に少額の贈与では、贈与税の方が税負担が重くなる傾向にあります。

「生前贈与」が「相続」より有利になる条件

原則として、財産総額が基礎控除内に収まる場合は相続が有利ですが、以下のようなケースでは生前贈与が有効な節税手段となります。

1. 暦年贈与の非課税枠を最大限活用する
年間110万円以下の贈与であれば、贈与税はかかりません。この枠を長期間にわたって、複数人に行うことで、着実に財産を減らし、将来の相続税の課税対象額を減らすことができます。これが生前贈与の最大のメリットです。

2. 相続開始前の「持ち戻し」ルールの理解(改正に注意)
生前贈与を行っても、相続開始前3年以内に行われた贈与は、相続財産に加算されて相続税の対象とされるルール(持ち戻し)がありました。
しかし、令和6年1月1日以降の贈与から、この持ち戻し期間が順次7年に延長されます。これにより、生前贈与による相続税対策はより早く(若いうちから)始める必要性が高まりました。

3. 特例制度の活用
特定の目的のための贈与は、非課税となる特例が用意されています。
教育資金贈与: 孫などに教育資金として贈与する場合の非課税特例。
結婚・子育て資金贈与: 結婚・子育て資金として贈与する場合の非課税特例。
住宅取得等資金贈与: 子や孫の住宅購入資金として贈与する場合の非課税特例。
これらの特例を適用できれば、大きな金額でも非課税で移転させることができます。

まとめ:早く始めることが鍵
生前贈与と相続、どちらが得かは、財産の総額、相続人の数、そして「いつから対策を始めるか」にかかっています。特に持ち戻し期間の延長により、早く、計画的に非課税枠を活用した贈与を始めることが、家族全体の手取りを増やす上で最も重要になっています。

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