基礎知識・入門編⑩ 「遺留分」とは?兄弟姉妹にはない権利を知っておこう
◆◇「遺留分」とは?◇◆
相続において、「遺言書がすべてに優先する」とよく言われます。確かに、故人(被相続人)の意思が記された遺言書は強力です。しかし、この遺言書の自由を、法律が例外的に制限する権利が存在します。それが「遺留分(いりゅうぶん)」です。
遺留分とは、特定の法定相続人に、最低限保証された遺産の取得分を指します。この権利を知らないと、遺言書の内容に納得がいかなくても泣き寝入りすることになりかねません。
遺留分は「家族の生活保障」のための権利
なぜ、遺言書があっても遺留分という権利が優先されるのでしょうか。
それは、遺留分が残された家族の生活を保障するという側面を持つからです。
例えば、「全財産をボランティア団体に寄付する」という遺言書があった場合、残された配偶者や未成年の子どもが路頭に迷ってしまう可能性があります。このような事態を防ぎ、家族間の公平性と最低限の生活の安定を図るために、遺留分は定められています。
遺留分を持つ人、持たない人
遺留分はすべての法定相続人に認められているわけではありません。
遺留分を持つのは、以下の「兄弟姉妹以外の相続人」です。
◎遺留分を持つ人⇒配偶者(夫または妻)、子(孫などの直系卑属を含む)、直系尊属(父母、祖父母など)
◎遺留分を持たない人⇒兄弟姉妹、甥・姪
なぜ、兄弟姉妹には遺留分がないのか?
兄弟姉妹には遺留分がありません。これは、法律が兄弟姉妹の関係を、配偶者や子のような「生活の基盤を共にすべき密接な関係」ではないと見なしているためです。
故人が遺言書に「全財産を長男に相続させる」と書き、相続人が長男と次男(兄弟姉妹)だけだった場合、次男は遺留分を主張する権利がありません。遺言書が優先され、次男は財産を一切受け取れないことになります。
遺留分の割合はどれくらい?
遺留分の割合は、相続人の構成によって異なります。
◎直系尊属(父母など)のみが相続人の場合:故人の財産の3分の1
◎上記以外の場合(配偶者、子、兄弟姉妹のケース):故人の財産の2分の1
たとえば、配偶者と子がいる場合、子の遺留分は「財産の2分の1」を子の人数で分けた額となります。
遺留分を侵害されたらどうする?
もし遺言書によってあなたの遺留分が侵害されていた場合(例:遺言書に「全財産を他人に譲る」と書かれていた)、侵害している相手に対し、侵害された分の金銭の支払いを請求できます。これを「遺留分侵害額請求」と言います。
この請求は、相続の開始(故人の死亡)と、遺留分を侵害する遺言書が存在することを知った日から1年以内に行わなければなりません。この1年という期限は非常に短く、これを過ぎると時効で権利が消滅してしまうため、迅速な対応が必要です。
★遺留分は、残された家族を守るための最後の砦となる権利です。ご自身の権利と期限をしっかり把握し、不公平な相続を防ぎましょう。


