遺言書作成・活用編⑤ 遺言書があっても揉める?無効になるケースと注意すべき点

◆◇遺言書を作成するにあたっての注意すべき点⚠️◇◆

「遺言書さえあれば安心だ」と思われがちですが、残念ながら、遺言書があったにもかかわらず家族間で激しい争いが起こるケースは少なくありません。遺言書は、形式が不完全なために無効になったり、内容が不公平なために争いの火種になったりすることがあるからです。
ここでは、遺言書が原因で揉める主なパターンと、それを防ぐための注意点を解説します。

1. 遺言書が「無効」になる主なケース

遺言書が法律上の効力を失い、無効と判断されるケースは、ほとんどが自筆証書遺言で発生します。

(1)形式の不備(自筆証書遺言の場合)
民法で定められた形式上の要件が一つでも欠けていると、遺言書は無効になります。
□全文が自筆ではない: パソコンで作成したり、代筆を依頼したりした部分がある(財産目録を除く)。
□日付の記載漏れ・曖昧さ: 日付が書かれていない、または「吉日」など具体的な日付が不明確である。
□署名・押印の欠落: 遺言者の署名や押印がない。

(2)遺言能力の欠如
遺言書作成時に、遺言者に遺言能力(自分の財産をどうしたいか判断できる能力)がなかったと判断された場合、無効になります。
□ケース: 認知症が進行していた時期に作成された、または精神上の障害で正常な判断ができない状態であったことが、後に医師の診断書などで証明された場合。

2. 遺言書があっても「揉める」3つの火種

形式的には有効な遺言書でも、その内容によって家族の不満が爆発し、争いに発展することがあります。

火種1:遺留分を侵害している
特定の法定相続人(配偶者、子、父母など。兄弟姉妹を除く)には、遺産に対して最低限の取り分(遺留分)が保証されています。
揉めるケース: 遺言書で「全財産を長男に相続させる」などと、他の相続人の遺留分を一切無視した内容になっていた場合、侵害された相続人は遺留分侵害額請求(金銭請求)を行うことになり、争いが始まります。
火種2:財産の特定が曖昧である
遺言書に「A銀行の預金」とだけ書かれていても、その支店名や口座番号が特定されていないと、どの口座のことか曖昧になり、遺言の解釈を巡って揉めることがあります。
揉めるケース: 不動産を地番などで特定せずに「実家」とだけ書いていた場合など、財産を巡って疑念が生じます。
火種3:付言事項がなく、理由が不明瞭である
分け方自体は法的に問題なくても、「なぜこのような分け方になったのか」という理由が書かれていないと、不公平感から不満が噴出します。
揉めるケース: 「長男に多く渡す」という内容に対し、他の兄弟が「なぜだ」と不信感を抱き、感情的な対立につながります。

予防策:公正証書遺言の選択と「想い」の明記

遺言書によるトラブルを防ぐ最善策は、以下の2点を徹底することです。

1.「公正証書遺言」を選ぶ: 公証人が関与し、形式不備で無効になるリスクが極めて低くなります。また、作成時の遺言能力についても公証人が確認するため、後の争いを予防できます。

2.「付言事項」で理由を語る: 遺言書の中に、「財産をこう分けたのは、長年介護してくれた〇〇に感謝しているから」といった理由や感謝の言葉を明記しましょう。これにより、遺言の真意が伝わり、家族の納得感が大きく高まります。

遺言書は法的な文書であると同時に、家族の心を納得させる「最後のメッセージ」でなければなりません。

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