基礎知識・入門編④ 相続の開始はいつ?死後の手続きとタイムスケジュール

◆◇死後の手続きとタイムスケジュール◇◆

突然ですが、相続は一体いつ始まるのでしょうか?
答えは明確です。
相続は、被相続人(亡くなった方)が死亡した瞬間に開始します。
しかし、そこからが大変です。葬儀や悲しみに暮れる間もなく、残されたご家族は法的に期限が定められた様々な手続きを進めなければなりません。
ここでは、相続開始後の主要な手続きと、特に注意すべき「3つの重要な期限」をタイムスケジュールに沿って解説します。

ステップ1:死亡直後(~1週間程度)

故人の死亡直後は、相続手続きよりも、まず人の死に関わる手続きが最優先されます。
1.死亡診断書の受領: 医師から死亡診断書を受け取ります。これがなければ、その後の手続きが一切できません。
2.死亡届の提出: 死亡から7日以内に、役所に死亡届を提出します。これにより、故人の戸籍に死亡が記載され、火葬許可証が交付されます。
3.葬儀・埋葬: 葬儀を行い、埋葬または火葬を行います。

ステップ2:初期準備(死亡から1ヶ月以内)

この時期から、本格的な相続手続きの準備が始まります。迅速さが求められる作業です。
1.遺言書の有無の確認: 遺言書(特に公正証書遺言以外)がある場合は、開封せずに見つかった旨を相続人全員に伝えます。
2.相続人の確定(戸籍収集): 誰が相続人になるのかを確定するため、故人の出生から死亡までのすべての戸籍謄本を集めます。これは複雑な作業で、後々の手続きの土台となります。
3.相続財産の概略把握: 預金通帳、不動産の権利書、借用書などを確認し、プラス・マイナスの財産がどれくらいあるのか、大まかに把握します。

ステップ3:3ヶ月のデッドライン(死亡から3ヶ月以内)

この3ヶ月は、相続手続きにおける最初の、そして最も重要なタイムリミットです。
⚠️ 最重要期限その1:相続放棄・限定承認の申述(3ヶ月)
故人に借金などマイナスの財産が多く、相続したくない場合は、「自己のために相続が開始したことを知ったとき」から3ヶ月以内に家庭裁判所に相続放棄または限定承認の申述をしなければなりません。
この期限を過ぎてしまうと、財産も借金もすべて相続したとみなされ(単純承認)、
後から借金が発覚しても逃れられなくなるため、財産調査を急ぐ必要があります。

ステップ4:4ヶ月のデッドライン(死亡から4ヶ月以内)

⚠️ 最重要期限その2:所得税の準確定申告
故人が事業をしていた場合や、多額の医療費控除があった場合など、死亡した年の所得税について、相続人が代わって確定申告(準確定申告)を行う必要があります。
期限は死亡から4ヶ月以内です。

ステップ5:財産分割と10ヶ月のデッドライン

初期対応を終えると、いよいよ遺産の分け方を決める話し合いに移ります。
1.遺産分割協議: 相続人全員で集まり、誰がどの財産をどれくらい受け取るかを話し合い、合意内容を遺産分割協議書にまとめます。
2. 名義変更手続き: 遺産分割協議書に基づき、不動産の相続登記(名義変更)や、預貯金の払い戻し手続きを行います。

⚠️ 最重要期限その3:相続税の申告と納付(10ヶ月)
相続財産の総額が、法律で定められた基礎控除額を超える場合、
死亡から10ヶ月以内に税務署へ相続税の申告と納税を行わなければなりません。

この期限を過ぎると、延滞税などのペナルティが課されるだけでなく、
「配偶者の税額軽減」や「小規模宅地等の特例」といった大きな節税特例が
使えなくなるリスクもあるため、<絶対に守るべき期限です。

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相続手続きは、このように多くの期限と複雑な工程が絡み合っています。
手続きに不安がある場合は、期限が来る前に専門家(司法書士、税理士、行政書士など)に相談することをおすすめします。

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