基礎知識・入門編⑦ 「遺産分割協議」って何を話し合うの?スムーズに進めるコツ

◆◇「遺産分割協議」とは◇◆

相続が発生したとき、「うちには遺言書がない」というご家庭がほとんどです。遺言書がない場合、故人(被相続人)が残した財産を誰が、どのように引き継ぐかを相続人全員で話し合って決める必要があります。この話し合いこそが、「遺産分割協議」です。

この協議が円満に進むかどうかが、「争族」になるかどうかの分かれ道となります。ここでは、遺産分割協議の目的、話し合うべき内容、そしてスムーズに進めるためのコツを解説します。

遺産分割協議の目的と参加者

目的は「共有財産の清算」
故人が亡くなると、遺言書がない限り、すべての相続財産は、一時的に相続人全員の共有状態になります。この共有状態を解消し、最終的に個々の相続人の所有物とするために行うのが、遺産分割協議です。
参加者は「法定相続人全員」
遺産分割協議に参加できるのは、法定相続人全員です。一人でも欠けていたり、協議に参加していない相続人がいたりすると、その協議は無効となってしまいます。そのため、まずは戸籍謄本を集めて、誰が法定相続人であるかを確定させることが第一歩です。

協議で話し合うべき3つの主要な論点

遺産分割協議では、主に以下の3つの論点について合意を形成する必要があります。

1. 財産の分け方の決定
法定相続分はあくまで目安であり、話し合いによって自由に分け方を決めることができます。分け方には主に3種類あります。

現物分割: 財産をそのままの形で分ける(例:長男が実家、次男が預貯金を相続)。

換価分割: 財産を売却し、その現金化された代金を分ける。

代償分割: 一人が財産をすべて引き継ぎ、その代償として他の相続人へ金銭を支払う。

2. 特別受益の考慮
一部の相続人が、故人から生前に多額の贈与(特別受益)を受けていた場合、その分を差し引いて分割額を計算するかどうかを話し合います。これは、公平性を保つ上で非常に重要なポイントです。

3. 寄与分の主張
故人の財産形成や維持・増加に特別に貢献した相続人(例:長年、無償で介護や家業の手伝いをした)がいる場合、その貢献度(寄与分)に応じた財産を、先に受け取るかどうかも話し合われます。

スムーズに協議を進めるための2つのコツ

協議を「争族」にしないためには、事前の準備と心構えが重要です。

コツ1 徹底した「見える化」と「早期の共有」
最も揉める原因は、「財産の範囲や評価が不明確なこと」と「情報の非対称性」です。

◎財産目録の作成: 預金、不動産、負債など、すべての財産を漏れなくリスト化し、正確な評価額を明記します。

◎全員への事前共有: この財産目録と、各相続人が受け取る法定相続分、および特別受益や寄与分の有無に関する情報を、協議の前に全員に共有します。情報が透明化されることで、不信感の芽を摘むことができます。

コツ2 「第三者の介入」と「書面化」
感情的な対立を避けるため、冷静な第三者(専門家)を交えることも有効です。

◎専門家の活用: 協議が難航しそうな場合や、不動産の評価などで意見が分かれる場合は、司法書士や弁護士といった第三者に立会いや助言を依頼することで、冷静な議論へと導いてもらえます。

◎書面での明確化: 合意した内容は必ず「遺産分割協議書」として書面にし、相続人全員が署名捺印(実印)します。この書面は、後の名義変更や税務申告に必須となります。

遺産分割協議は、故人の思いを受け止め、残された家族が未来へ進むための話し合いです。適切な準備と心構えをもって臨みましょう。

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