法人成りの手続き一覧|個人事業主から会社設立するときの流れと必要書類

法人成りの手続きの流れと必要書類

「個人事業から法人に切り替えたいけれど、何をどの順番で進めればいいのかわからない」

法人成り(個人事業主が法人を設立して事業を引き継ぐこと)は、会社設立の手続きに加えて個人事業側の整理も必要になるため、やることが一気に増えます。しかし法人成りは「会社設立」「資産と契約の引き継ぎ」「個人事業の廃業」の3つを正しい順序で進めれば迷いません(2026年現在)。

本記事では、法人成りの手続きを一覧表で整理し、会社設立の5ステップ・資産の引き継ぎ・廃業手続き・設立後の届出まで、順番と期限を税理士がわかりやすく解説します。

📌 この記事のポイント

  • ・法人成りは「会社設立」と「個人事業の引き継ぎ・廃業」の2段構え
  • ・準備から設立完了までは2〜3週間程度が目安(合同会社は最短1〜2週間程度)
  • ・法定費用の目安は株式会社で約20万〜25万円、合同会社で約7万〜10万円
  • ・設立後の届出は期限の短い順に。社会保険の新規適用届は設立から5日以内が原則
  • ・在庫や車両の引き継ぎ方法によって税金が変わるため、設計は税理士に相談する

法人成りとは?通常の会社設立との違い

法人成りとは、個人事業主が株式会社や合同会社を設立し、これまで個人で行ってきた事業を法人に引き継ぐことです。

ゼロから会社を作る新規の会社設立と違い、法人成りには「すでに動いている事業を止めずに移す」という難しさがあります。会社設立の手続きに加えて、次の2つが必要になるためです。

  1. 事業用の資産・契約・口座を個人から法人へ引き継ぐ
  2. 個人事業を廃業する(税務署への届出と廃業年分の確定申告)

 

つまり法人成りは、「会社設立」と「個人事業の引き継ぎ・廃業」の2段構えで進む手続きです。

全体のスケジュールは、準備から設立完了まで2〜3週間程度が目安です。合同会社は定款認証が不要なため、最短1〜2週間程度で設立できます。引き継ぎと廃業の手続きは設立後にも続くため、余裕を持った計画を立てましょう。

なお「そもそも法人化すべきか」という判断は、事業の利益(所得)が800万〜900万円程度を超えるあたりが検討の目安といわれます。判断基準の詳細は、個人事業主の法人化のメリット・デメリットを解説した記事をご覧ください。

法人成りの手続き一覧【全体マップ】

法人成りで必要になる主な手続きを一覧にまとめました(2026年現在)。

手続き 提出先 期限
設立登記の申請 法務局 設立日に申請
社会保険の新規適用届 年金事務所 設立から5日以内
廃業届(個人事業) 税務署 廃止から1か月以内
給与支払事務所等の開設届出書 税務署 開設から1か月以内
法人設立届出書 税務署 設立から2か月以内
法人設立届(地方税) 都道府県・市区町村 自治体により異なる
青色申告の承認申請書 税務署 設立3か月と1期末の早い日の前日
廃業年分の確定申告 税務署 翌年の申告期限まで

*スライドすることで表の全てが読めます。

期限の短いものから片づけるのが基本です。社会保険の新規適用届は設立から5日以内が原則で、法人成り後の届出でもっとも期限が短い手続きです。

なお、青色申告の承認申請書の正確な期限は「設立の日以後3か月を経過した日と第1期の事業年度終了の日のいずれか早い日の前日まで」です(多くの場合は設立から3か月以内)。表では短縮して記載しています。

従業員を雇用する場合は、労働基準監督署・ハローワークで労災保険と雇用保険の手続きも別途必要になります。

STEP1〜5 会社設立の手続き

まずは法人成りの前半、会社設立の5ステップを確認しましょう。

STEP1 基本事項の決定

商号(会社名)・事業目的・本店所在地・資本金・決算月といった、会社の基本事項を決めます。

法人成りでは、個人事業で使ってきた屋号をそのまま商号にするケースも多くあります。事業目的には、これから始める予定の事業も含めて記載しておくと、後の定款変更を避けられます。

資本金と決算月は、消費税や法人住民税の負担に直結する重要な項目です。ここは設立後に変更しづらいため、慎重に決めましょう。

STEP2 定款の作成・認証

定款(会社のルールブック)を作成します。株式会社は公証役場での認証が必要で、手数料は資本金の額などに応じて1万5,000円〜5万円です(2026年現在)。合同会社は認証が不要です。

紙の定款には収入印紙4万円がかかりますが、電子定款にすれば印紙代は不要になります。

STEP3 資本金の払込

会社の口座は登記完了後にしか作れないため、資本金は発起人(代表者)の個人口座に振り込みます。

振込後は通帳のコピーを取り、「払込があったことを証する書面(払込証明書)」を作成して登記申請に添付します。

STEP4 法務局への登記申請

登記申請書・定款・払込証明書などをそろえ、本店所在地を管轄する法務局へ申請します。申請した日が会社の設立日になるため、希望日がある場合は逆算して準備しましょう。

登録免許税は株式会社で最低15万円、合同会社で最低6万円です。法定費用の目安は株式会社で約20万〜25万円、合同会社で約7万〜10万円となります(2026年現在)。

市区町村の特定創業支援等事業の証明書があれば、登録免許税は株式会社7.5万円・合同会社3万円と半額になります(証明書を発行した市区町村と同じ市区町村内での設立に限ります)。

なお、登記申請の代理は司法書士の独占業務です。税理士事務所に依頼する場合も、登記手続き自体は連携する司法書士が対応します。

STEP5 設立後の届出

登記が完了したら、税務署・都道府県・市区町村・年金事務所への届出に進みます。

ここが法人成りでもっとも期限の管理が必要な工程です。詳しくは後半の「法人側の税務・社会保険の届出」で解説します。

法人成り特有の手続き|資産・契約の引き継ぎ

会社ができたら、個人で行ってきた事業を法人へ移します。新規の会社設立にはない、法人成り特有の工程です。

資産の引き継ぎ方法と税金の注意

在庫(棚卸資産)・車両・備品・工具など、事業用の資産を法人へ引き継ぎます。主な方法は次の3つです。

  1. 売買:個人から法人へ資産を売却する。もっとも一般的な方法です
  2. 現物出資:資産そのものを資本金として出資する。評価や手続きが複雑になりやすいです
  3. 法人で新たに取得:個人の資産は引き継がず、法人で買い直す

 

注意したいのは税金です。個人から法人への資産の引き継ぎでは、個人側に消費税や譲渡所得が発生する場合があります。

「単に名義を移すだけ」と考えて進めると、思わぬ納税が生じることがあります。引き継ぐ資産が多い方は、方法を決める前に税理士へ相談してください。

契約・口座・許認可の切替

資産以外にも、事業に紐づくものを法人名義へ切り替える必要があります。

  • 取引先との契約・請求書の名義:契約の巻き直しや、請求名義の変更を取引先に依頼します
  • 事業用の口座・クレジットカード:法人口座を開設し、入出金の流れを法人に移します
  • 事務所や店舗の賃貸契約:貸主の承諾を得て、契約者を法人に変更します
  • 許認可:業種によっては、法人として取り直しが必要な場合があります

 

特に許認可は要注意です。個人で取得した許可がそのまま法人に引き継がれるとは限らず、業種により扱いが異なるため、事前に許認可の窓口へ確認してください。

取引先への案内は、切り替え日を明記して早めに行うと、請求や入金のトラブルを防げます。

個人事業側の廃業手続き

事業を法人へ移したら、個人事業を閉じる手続きを行います。届出漏れが多い工程なので、一つずつ確認しましょう。

廃業届ほか税務署への届出

個人側で必要になる主な届出は次のとおりです(2026年現在)。

  • 個人事業の開業・廃業等届出書(廃業届):事業を廃止した日から1か月以内に税務署へ提出します
  • 所得税の青色申告のとりやめ届出書:個人での青色申告をやめるための届出です
  • 消費税の事業廃止届出書:個人で消費税の課税事業者だった場合に提出します
  • 給与支払事務所等の廃止届出書:個人事業で従業員に給与を支払っていた場合に提出します

 

該当するものだけを提出すれば足りますが、廃業届の1か月以内という期限は忘れやすいため、法人の登記完了とあわせて処理するのが確実です。

廃業年分の確定申告

廃業した年の分についても、個人としての確定申告が必要です。

1月から廃業日までの事業所得を計算して申告します。法人成りの年は「個人の最後の申告」と「法人の最初の決算」が並行するため、帳簿をどこで区切るかを明確にしておきましょう。

資産の引き継ぎで譲渡所得などが生じている場合も、この申告に含めます。判断に迷う場合は税理士に確認してください。

法人側の税務・社会保険の届出

法人側の届出は、期限の短い順に片づけるのが鉄則です。チェックリストで確認しながら進めてください(2026年現在)。

📋 法人側の届出チェックリスト(期限の短い順)

  • ☐ 社会保険の新規適用届(年金事務所・設立から5日以内が原則)
  • ☐ 給与支払事務所等の開設届出書(税務署・開設から1か月以内)
  • ☐ 法人設立届出書(税務署・設立から2か月以内)
  • ☐ 法人設立届(都道府県・市区町村。期限は自治体により異なるため要確認)
  • ☐ 青色申告の承認申請書(設立の日以後3か月を経過した日と第1期の事業年度終了の日のいずれか早い日の前日まで)
  • ☐ 労災保険・雇用保険の手続き(従業員を雇用する場合のみ・労基署とハローワーク)

もっとも期限が短いのは社会保険の新規適用届です。法人は社長1人でも加入が義務のため、登記完了を待つ間に書類を準備しておくとスムーズです。

青色申告の承認申請書は、出し忘れると初年度から赤字の繰越などの特典が使えません。法人設立届出書と同じタイミングで提出してしまうのが安全です。

消費税については、資本金1,000万円未満などの要件を満たせば、設立から最大2年程度、納税義務が免除される場合があります。ただしインボイス発行事業者として登録すると課税事業者になるため、免税は受けられません。取引先の構成を踏まえて判断しましょう。

まとめ|順序と期限を押さえれば法人成りは怖くない

法人成りの手続きは、「会社設立(5ステップ)」「資産と契約の引き継ぎ」「個人事業の廃業」「法人側の届出」の4つの塊で整理できます。

会社設立の法定費用は株式会社で約20万〜25万円、合同会社で約7万〜10万円、期間は2〜3週間程度が目安です。設立後は社会保険の5日以内を先頭に、期限の短い順で届出を進めましょう。

特に注意が必要なのは、資産の引き継ぎ方法によって個人側に消費税や譲渡所得が発生する場合があること、そして青色申告の承認申請の期限です。

順序と期限を押さえれば法人成りは着実に進められますが、資産の引き継ぎや資本金・決算月の設計は後から変更しにくい部分です。着手前に税理士へご相談ください。

法人成りのご相談は、ヤマザキ税理士事務所へ

春日部市、越谷市、さいたま市を中心に、会社設立・創業融資・節税対策をサポートする税理士事務所。初めての方も安心してご相談いただけます。初回相談無料です。

よくある質問(FAQ)

Q. 法人成りとは何ですか?

個人事業主が株式会社や合同会社を設立し、これまでの事業を法人に引き継ぐことです。会社設立の手続きに加えて、資産・契約の引き継ぎと個人事業の廃業手続きが必要になります。

Q. 法人成りの手続きは何から始めればよいですか?

会社の基本事項(商号・事業目的・本店・資本金・決算月)を決めることから始めます。特に資本金と決算月は税金に直結し、後から変更しづらいため、最初に設計しておくことが重要です。

Q. 法人成りの費用はいくらかかりますか?

会社設立の法定費用は株式会社で約20万〜25万円、合同会社で約7万〜10万円が目安です(2026年現在)。電子定款で印紙代4万円を節約したり、特定創業支援等事業の証明書で登録免許税を半額にできる場合もあります。

Q. 個人事業の廃業届はいつまでに出しますか?

事業を廃止した日から1か月以内に税務署へ提出します。あわせて青色申告のとりやめ届出書など、該当する届出も提出してください。

Q. 個人事業の資産や在庫はどうやって法人に引き継ぎますか?

売買・現物出資・法人での新規取得のいずれかで引き継ぎます。引き継ぎ方法によって個人側に消費税や譲渡所得が発生する場合があるため、方法を決める前に税理士へ相談してください。

Q. 許認可は法人に引き継げますか?

業種によっては、法人として取り直しが必要な場合があります。個人で取得した許可がそのまま引き継がれるとは限らないため、事前に許認可の窓口へ確認してください。

Q. 法人成り後、最初に出すべき届出はどれですか?

社会保険の新規適用届です。設立から5日以内が原則で、法人成り後の届出でもっとも期限が短い手続きです。登記完了を待つ間に書類を準備しておくとスムーズです。

Q. 法人成りで消費税の免税は受けられますか?

資本金1,000万円未満などの要件を満たせば、設立から最大2年程度、消費税の納税義務が免除される場合があります。ただしインボイス発行事業者として登録すると課税事業者になるため、免税は受けられません。

Q. 法人成りの手続きは自分でできますか?

できます。ただし登記申請の代理は司法書士の独占業務のため、専門家に任せる場合は司法書士が対応します。資本金・決算月の設計や資産の引き継ぎ方法は税金に直結するため、税理士に相談しながら進めるのが安全です。

監修者

税理士 山﨑 健司(ヤマザキ税理士事務所)
春日部市、越谷市、さいたま市を中心に、会社設立・創業融資・節税対策をサポートする税理士事務所。中小企業・個人事業主の起業支援に豊富な経験を持つ。


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