フリーランスが会社設立するメリットと注意点|法人化の手順・費用・節税効果を税理士が解説

「フリーランスとして収入が増えてきたけれど、会社を設立したほうが得なのだろうか」
そんな迷いを抱えるフリーランスの方は少なくありません。
収入が安定してくると、法人化は誰もが一度は考えるテーマです。
結論からいえば、フリーランスが会社設立(法人化)すべきかどうかは、利益の水準と将来の事業計画で判断できます。
やみくもに法人化すると、節税どころかコストばかりが増えてしまうこともあるため、判断基準を知っておくことが大切です。
この記事では、フリーランスが会社設立を検討すべき年収・売上の目安、法人化のメリット・デメリット、設立手順5ステップと費用までを税理士が解説します。
読み終えるころには、ご自身が「今、法人化すべきかどうか」を判断する材料がひととおりそろいます。
📌 この記事のポイント
- ・法人化の目安は「利益800万〜900万円程度」または「売上1,000万円超」が一般的
- ・フリーランスでも1人で会社(ひとり法人・マイクロ法人)を設立できる
- ・法人化のメリットは節税の選択肢・社会的信用・消費税免除の可能性など5つ
- ・赤字でも発生する維持コストや社会保険料の負担などデメリットも必ず確認する
- ・会社設立の手順は5ステップ。株式会社は約20万〜25万円、合同会社は約7万〜10万円が目安
フリーランスが会社設立(法人化)するとどうなる?個人事業主との違い
フリーランスの多くは、税務上は「個人事業主」として活動しています。
会社設立(法人化)とは、個人で行っていた事業を株式会社や合同会社などの法人に移すことで、「法人成り」とも呼ばれます。
フリーランス・個人事業主・法人の違いを比較
個人事業主のままでいる場合と、法人化した場合の主な違いは次のとおりです。
個人事業主と法人の主な違い
| 項目 | 個人事業主(フリーランス) | 法人(会社設立後) |
|---|---|---|
| 開業・設立の手続き | 開業届を出すだけ (費用0円) |
定款作成・登記が必要 (合同会社は約7万〜10万円、株式会社は約20万〜25万円) |
| かかる税金 | 所得税(5〜45%の累進課税) +住民税など |
法人税(中小法人は15〜23.2%程度) +役員報酬への所得税など |
| 社会保険 | 国民健康保険・国民年金 | 健康保険・厚生年金 (原則加入義務) |
| 経理・申告 | 確定申告 (自力でも可能) |
法人決算・法人税申告 (税理士依頼が一般的) |
| 責任の範囲 | 無限責任 | 出資額の範囲の有限責任 |
| 社会的信用 | 法人より低くなりがち | 高い (法人限定の取引・融資に対応) |
※税率は2026年現在の制度に基づく目安です。
このように、法人化は税金の仕組みだけでなく、社会保険や信用面まで幅広く変わる選択です。
フリーランスでも1人で会社を設立できる
「会社」と聞くと従業員を雇うイメージがあるかもしれませんが、株式会社も合同会社も1人で設立できます(2026年現在)。
社長1人だけの会社は「ひとり法人」や「マイクロ法人」と呼ばれ、フリーランスエンジニアやデザイナーの法人化では最も一般的な形です。
取締役会や監査役を置く必要もなく、自分1人が代表者兼株主という形で運営できます。
「人を雇う予定がないから法人化できない」ということはありませんので、安心してください。
フリーランスが会社設立する年収・売上の目安はいくら?
法人化を考えるフリーランスが最も知りたいのが、「いくら稼いだら会社設立すべきか」という目安です。
一般的には、次の2つの水準が判断ラインといわれています。
利益(所得)800万〜900万円程度が法人化の分岐点といわれる理由
個人事業主の所得税は、所得が増えるほど税率が上がる累進課税で、2026年現在は5%から最高45%まで7段階です。
住民税(約10%)と合わせると、高所得帯では合計55%程度に達します。
一方、法人税の税率は中小法人の場合、所得800万円以下の部分が15%程度、800万円を超える部分が23.2%程度です(2026年現在)。
所得が大きくなるほど、「累進課税の個人」より「税率がほぼ一定の法人」のほうが有利になりやすい構造です。
このため、利益(所得)が800万〜900万円程度を超えたあたりが、法人化を検討する目安とされています。
ただし、家族構成や所得控除の状況によって分岐点は変わるため、正確なシミュレーションは税理士に相談するのが確実です。
売上1,000万円超なら消費税・インボイスの観点からも検討
売上が1,000万円を超えると、原則として2年後から消費税の課税事業者になります。
このタイミングで法人化すると、資本金1,000万円未満などの要件を満たす場合、最大2年程度、消費税の納税義務が免除される場合があります(2026年現在)。
ただし、インボイス制度開始後は注意が必要です。
取引先との関係でインボイス発行事業者として登録している場合、登録を続ける限り課税事業者となるため、免税のメリットは受けられません。
免税を選べるかどうかは取引先の状況次第といえます。
法人化しないほうがよいケース
次のようなフリーランスは、あえて法人化しない選択も合理的です。
- ・利益が500万円程度以下で、当面大きく増える見込みがない
- ・売上の変動が激しく、赤字になる年がありそう
- ・経理・社会保険などの事務負担やコストを増やしたくない
- ・数年以内に事業を縮小・廃業する可能性がある
法人は赤字でも維持コストがかかるため、利益水準が低いうちは個人事業主のままのほうが手取りが多いことも珍しくありません。
「周りが法人化しているから」という理由だけで判断しないことが大切です。
フリーランスが会社設立する5つのメリット
フリーランスが会社設立で得られる主なメリットは、次の5つです。
① 節税の選択肢が広がる
法人化すると、自分に支払う役員報酬を経費(損金)にでき、受け取る側では給与所得控除が使えます。
なお、役員報酬を損金にするには、設立から原則3か月以内に金額を決め、毎月同額を支給する「定期同額給与」などの要件を満たす必要があります。
所得の分散により、個人事業主時代より税負担を抑えられる可能性があります。
また、経費として認められる範囲が広がるのも法人の特徴です。
役員社宅や出張日当、生命保険料の一部損金算入など、個人事業主にはない選択肢が使えます。
赤字(欠損金)の繰越期間も、個人の3年に対して法人は10年と長くなります(2026年現在、青色申告の場合)。
② 消費税が最大2年間免除される場合がある
前述のとおり、資本金1,000万円未満などの要件を満たす新設法人は、設立から最大2年程度、消費税の納税義務が免除される場合があります(2026年現在)。
ただし、特定期間(1期目の最初の6か月)の課税売上高と給与等支払額がいずれも1,000万円を超える場合や、インボイス発行事業者に登録する場合は、免除は1年のみ、あるいは初年度から課税事業者となります。
「最大2年」が使えるかは事前の確認が必要です。
③ 社会的信用が高まり大手との取引・融資に有利
企業によっては「法人としか契約しない」という取引ポリシーを設けていることがあります。
法人化すると登記情報が公開され、契約主体としての信用力が上がるため、大手企業との直接契約や金融機関からの融資、事業用の賃貸契約などで有利に働きやすくなります。
④ 社会保険(厚生年金・健康保険)に加入できる
法人化すると、1人社長でも健康保険・厚生年金に加入します。
国民年金より厚生年金のほうが将来の年金額が手厚く、保障面の充実は長期的なメリットです。
扶養の仕組みを使える点も、国民健康保険にはない特徴です。
⑤ 決算月を自由に決められる・有限責任になる
個人事業主の会計期間は1〜12月に固定されますが、法人は決算月を自由に設定できます。
繁忙期を避けて決算を組めるのは実務上の利点です。
また、法人の債務は原則として出資額の範囲の有限責任です。
万一の事業リスクから個人資産を守りやすくなる点も、会社設立の重要なメリットといえます。
フリーランスが会社設立するデメリットと注意点
メリットの一方で、法人化には確実に増えるコストと負担があります。
ここを見落とすと「法人化して手取りが減った」という事態になりかねません。
設立費用・維持コストがかかる
会社設立には、株式会社で約20万〜25万円、合同会社で約7万〜10万円の法定費用がかかります。
さらに見落としやすいのが、設立後に毎年かかる維持コストです。
特に、法人は赤字でも法人住民税の均等割(年7万円程度)が発生する点には注意が必要です(2026年現在)。
加えて、法人の決算・申告を税理士に依頼する場合は年20万〜40万円程度の顧問料・決算料が目安となり、個人事業主時代にはなかった固定費が増えます。
社会保険料の負担が発生する
法人化して役員報酬を支払う場合、健康保険・厚生年金への加入は原則として義務です。
保険料は会社と個人で折半しますが、ひとり法人では実質的に全額を自分で負担する形になります。
役員報酬の金額によっては、国民健康保険・国民年金時代より負担が大きく増えることもあります。
役員報酬の設定は、税金と社会保険料のバランスを見て決めることが重要です。
事務負担が増える(法人決算は自力では困難)
法人になると、複式簿記による厳密な経理、法人税・消費税の申告、社会保険の手続き、役員報酬の源泉徴収など、事務作業が大幅に増えます。
個人の確定申告と違い、法人決算・申告を専門知識なしで自力で行うのは現実的ではありません。
税理士費用はかかりますが、節税の提案や税務調査対応まで含めて考えれば、専門家に任せる価値は十分にあります。
法人化の検討段階から税理士に相談しておくと、設立後の体制もスムーズに整います。
フリーランスの会社設立の手順5ステップ
フリーランスが会社を設立する流れは、次の5ステップです。
すべて自分で行う場合、準備から設立完了まで2〜3週間程度が目安です。
STEP1 会社の基本事項を決める
商号(会社名)・事業目的・本店所在地・資本金・決算月など、定款や登記申請書に記載する基本事項を決めます。
資本金は1円から可能ですが、消費税免除の要件や信用面を考慮し、100万〜300万円程度に設定するケースが多く見られます。
STEP2 定款を作成し認証を受ける
定款(会社のルールブック)を作成します。
株式会社の場合は公証役場での認証が必要で、手数料は資本金の額などに応じて1万5,000円〜5万円程度です(2026年現在)。
資本金100万円未満のひとり法人なら、要件を満たせば手数料は1万5,000円程度で済みます。
合同会社は認証不要です。
電子定款を使えば、紙の定款にかかる印紙代4万円も節約できます。
STEP3 資本金を払い込む
発起人(自分)の個人口座に資本金を振り込み、通帳のコピーなどで払込を証明します。
会社の銀行口座は登記完了後でないと作れないため、この時点では個人口座を使います。
STEP4 法務局で設立登記を申請する
登記申請書・定款・払込証明書などをそろえ、本店所在地を管轄する法務局に申請します。
登録免許税は株式会社最低15万円、合同会社最低6万円です。
申請日が会社の設立日となり、登記完了まで1〜2週間程度かかります(登記申請の代理は司法書士が行う業務のため、設立登記については司法書士に依頼する必要があります)。
STEP5 税務署・年金事務所などへ届出する
設立後は、税務署への法人設立届出書(設立から2か月以内が目安)や青色申告の承認申請書、都道府県・市区町村への届出が必要です。
社会保険の新規適用届は、設立から5日以内に年金事務所へ提出するのが原則とされています(2026年現在)。
期限が短いものから優先して進めましょう。
※登記完了までに1〜2週間程度かかるため、実務では登記事項証明書(登記簿謄本)を取得でき次第、速やかに提出します。5日を過ぎてしまっても、登記完了後すみやかに手続きすれば通常は受け付けてもらえます。
株式会社と合同会社どちらを選ぶ?費用比較
フリーランスの法人化では、株式会社と合同会社のどちらかを選ぶのが一般的です。
設立費用の目安を比較すると次のとおりです。
株式会社と合同会社の設立費用の比較
| 項目 | 株式会社 | 合同会社 |
|---|---|---|
| 登録免許税 | 最低15万円 | 最低6万円 |
| 定款認証手数料 | 1万5,000円〜5万円程度 (資本金額等による) |
不要 |
| 定款印紙代 (電子定款なら不要) |
4万円 | 4万円 |
| 合計の目安 | 約20万〜25万円 | 約7万〜10万円 |
株式会社も、電子定款と引き下げ後の認証手数料を組み合わせれば、合計20万円を下回る場合があります。
対外的な信用や将来の資金調達を重視するなら株式会社、コストを抑えてスピーディに法人化したいなら合同会社が向いています。
1人で事業を続ける前提であれば、費用の安い合同会社を選ぶフリーランスも増えています。
法人成りの独自手続きにも注意(廃業届・資産の引き継ぎ・取引先への通知)
フリーランスからの法人化は、単なる会社設立ではなく「個人事業から法人への引っ越し」です。
会社設立の手続きに加えて、次のような法人成り特有の手続きが必要になります。
- ・個人事業の廃業届・青色申告のとりやめ届出書の提出
- ・売掛金・備品・車両など事業用資産の法人への引き継ぎ(売買・現物出資など)
- ・取引先への法人化の通知と契約の巻き直し
- ・事業用口座・クレジットカード・各種サービスの名義変更
資産の引き継ぎ方法によっては、個人側に譲渡所得などの税金が発生することもあります。
引き継ぐ資産が多い方は、事前に税理士へ相談しながら進めると安心です。
まとめ:法人化の判断は「利益の水準」と「事業計画」で決める
フリーランスの会社設立は、利益800万〜900万円程度、または売上1,000万円超が検討の目安です。
節税・信用・社会保険などのメリットと、維持コスト・事務負担などのデメリットを比較し、ご自身の事業計画に合わせて判断しましょう。
法人化の損益分岐点は、所得控除や家族構成、インボイス対応の状況によって一人ひとり異なります。
迷ったら、シミュレーションの段階から税理士に相談するのが失敗しない近道です。
フリーランスの会社設立・法人化のご相談は、ヤマザキ税理士事務所へ
春日部市、越谷市、さいたま市を中心に、会社設立・創業融資・節税対策をサポートする税理士事務所。法人化すべきかどうかのシミュレーションもご相談いただけます。初回相談無料です。
よくある質問(FAQ)
Q. フリーランスが法人化すべき年収はいくらですか?
売上から経費を引いた利益(所得)が800万〜900万円程度を超えたあたりが目安といわれます(2026年現在)。
所得控除や家族構成で分岐点は変わるため、税理士によるシミュレーションがおすすめです。
Q. フリーランスが法人化するのはいつがベストですか?
利益が目安を超えたときや、消費税の課税事業者になるタイミングの直前が代表的です。
大型契約や融資の予定など、信用力が必要になる前に法人化するのも有効です。
Q. 売上1,000万円あれば法人化すべきですか?
売上1,000万円超は消費税の課税事業者になる水準のため、法人化を検討するきっかけになります。
ただし判断基準はあくまで利益です。
売上が多くても利益が少なければ、法人化のメリットは限定的です。
Q. フリーランスでも1人で会社を設立できますか?
できます。
株式会社も合同会社も1人で設立でき、「ひとり法人」「マイクロ法人」と呼ばれます。
従業員を雇う予定がなくても問題ありません。
Q. フリーランスが会社設立するにはいくら必要ですか?
法定費用の目安は、株式会社で約20万〜25万円、合同会社で約7万〜10万円です(2026年現在)。
別途、資本金と、専門家に依頼する場合の報酬がかかります。
Q. 会社設立後、社会保険への加入は必須ですか?
役員報酬を支払う場合、1人社長でも健康保険・厚生年金への加入が原則義務です。
新規適用届は設立から5日以内に年金事務所へ提出するのが原則とされています。
Q. 株式会社と合同会社どちらがよいですか?
信用力や将来の資金調達を重視するなら株式会社、設立費用を抑えたいなら合同会社が向いています。
1人で事業を続ける前提なら、コストの低い合同会社を選ぶ方も多くいます。
Q. 法人化すると消費税はいつまで免除されますか?
資本金1,000万円未満などの要件を満たせば、設立から最大2年程度免除される場合があります(2026年現在)。
ただしインボイス発行事業者として登録すると課税事業者になるため、免税の恩恵は受けられません。
Q. フリーランスエンジニアが法人化する目安はありますか?
基本の目安は他のフリーランスと同じく利益800万〜900万円程度です。
エンジニアは経費が少なく利益率が高い傾向があるため、売上が同じでも早めに分岐点へ到達しやすい点が特徴です。
監修者
税理士 山﨑 健司(ヤマザキ税理士事務所)
春日部市、越谷市、さいたま市を中心に、会社設立・創業融資・節税対策をサポートする税理士事務所。中小企業・個人事業主の起業支援に豊富な経験を持つ。




