副業で会社設立できる?会社員がマイクロ法人を設立するメリットと注意すべきポイント|税理士が解説

会社員が副業でマイクロ法人を設立するメリットと注意点

「副業の収入が増えてきたので会社を設立したいけれど、勤め先にバレないだろうか」

そんな不安から、法人化に踏み切れない会社員の方は少なくありません。
副業が軌道に乗るほど、税金や社会保険の悩みも大きくなるものです。
結論からいえば、会社員でも会社設立は法律上可能ですが、勤め先に知られる経路と社会保険の扱いを正しく理解しておくことが重要です。
仕組みを知らないまま設立すると、思わぬ形で勤務先に伝わったり、期待した節税効果が得られなかったりすることがあります。

この記事では、会社員が副業で会社(マイクロ法人)を設立する方法、勤め先に知られる3つの経路と対策、メリット・デメリット、費用と税金のポイントを税理士が解説します。
「会社員のまま法人化すべきか」を判断する材料がひととおりそろう内容です。

📌 この記事のポイント

  • ・会社員の会社設立は法律上可能。ただし就業規則の副業禁止規定の確認が必須
  • ・勤め先に知られる主な経路は「登記の公開」「住民税」「社会保険の届出」の3つ
  • ・役員報酬を取らなければ社会保険の加入義務は生じないのが一般的(2026年現在)
  • ・「マイクロ法人で社会保険料節約」は個人事業主向けのスキームで、会社員には効果がない
  • ・設立費用は株式会社約20万〜25万円、合同会社約7万〜10万円が目安

会社員でも会社設立はできる?法律上の扱いと就業規則の注意点

まず、多くの方が気になる「そもそも会社員でも会社を設立できるのか」という疑問に答えます。
結論は「法律上は可能」です。
ただし、確認すべき点が2つあります。

法律上、会社員の会社設立に制限はない(公務員は例外)

会社法上、会社員が株式会社や合同会社を設立し、代表取締役に就任することを禁止する法律はありません(2026年現在)。
勤務先に在籍したまま、自分の会社を持つこと自体は適法です。

ただし、公務員は例外です。
国家公務員法・地方公務員法により、営利企業の役員への就任や自営は原則として制限されており、許可なく会社を設立して役員になることはできません。

就業規則の副業禁止規定・競業避止義務を必ず確認する

法律上は自由でも、勤務先の就業規則で副業が禁止・許可制とされている場合、無断の会社設立は懲戒処分の対象になり得ます。
特に、勤務先と同種の事業を行う「競業」は、副業が認められている会社でも問題視されやすい領域です。

設立前に就業規則を確認し、許可制であれば申請を検討するのが安全です。
「バレなければよい」という考えで進めるのはリスクが大きいことを、最初に押さえておきましょう。

マイクロ法人とは?会社員の副業法人でよくある形

会社員の副業法人は、「マイクロ法人」と呼ばれる形になるのが一般的です。
マイクロ法人とは、社長1人(または家族のみ)で運営する小規模な会社のことで、法律上の正式な用語ではなく通称です。

マイクロ法人と個人事業主の副業の違い

副業を個人(雑所得・事業所得)で行うか、法人で行うかの主な違いは次のとおりです。

個人の副業とマイクロ法人の副業の違い

項目 個人の副業 マイクロ法人の副業
始め方 手続きほぼ不要
(開業届のみ)
定款作成・登記が必要
(合同会社は約7万〜10万円、株式会社は約20万〜25万円)
利益への課税 給与と合算して所得税
(累進課税)
法人税(中小法人は15〜23.2%程度)で給与と分離
赤字の扱い 事業所得なら給与と損益通算できる場合がある 法人内で繰越
(給与所得とは通算不可)
維持コスト ほぼなし 均等割年7万円程度
+税理士費用など
名義・信用 個人名義 法人名義で契約・融資が可能

 

※税率などは2026年現在の制度に基づく目安です。

利益が小さいうちは個人のまま、利益が育ってきたら法人化、というのが基本的な考え方です。

会社員のマイクロ法人でよくある事業

会社員が設立するマイクロ法人では、次のような事業が多く見られます。

  • ・株式・投資信託などの資産運用(資産管理会社)
  • ・不動産賃貸業(アパート・区分マンション経営)
  • ・コンサルティング・顧問業
  • ・ブログ・動画・ネット販売などのインターネット事業

 

特に資産運用や不動産は、本業と競業しにくく、法人化との相性がよい分野です。
どの事業で法人化するかによって税務上の扱いも変わるため、事前に税理士へ相談すると安心です。

会社員の会社設立は勤め先にバレる?3つの経路と対策

会社員の法人化で最も多い質問が「会社にバレませんか?」というものです。
知られる可能性のある経路は、主に次の3つです。
それぞれの仕組みと対策を解説します。

経路① 登記情報は誰でも閲覧できる(役員名・住所が公開される)

会社を設立すると、商号・本店所在地・役員の氏名などが登記され、法人登記は公開情報になります。
登記情報(役員名・住所)は誰でも閲覧でき、完全に隠すことはできません。

勤務先の関係者が登記情報や法人番号公表サイトを調べれば、あなたが役員であることは確認できてしまいます。
「登記で偶然見つかる」可能性は高くありませんが、ゼロにはできないと理解しておきましょう。

経路② 住民税の通知で知られる仕組み

自分の法人から役員報酬を受け取ると、その分の住民税が本業の給与分と合算され、勤務先経由の特別徴収税額が増えます。
経理担当者が「給与に対して住民税が多い」と気づくことで、副業が発覚するケースは典型例です。

役員報酬を取らず、利益を法人に留保しておけば、個人の住民税は増えないため、この経路からは知られにくくなります。

なお、副業分の住民税を普通徴収(自分で納付)に切り替える方法は、給与所得(役員報酬)については選択できないのが一般的です。
個人事業の副業(事業所得・雑所得)であれば、確定申告の際に住民税を普通徴収にして勤務先へ通知が行かないようにできる自治体が多いのに対し、法人から受け取る役員報酬は税法上「給与所得」にあたるため、原則として本業の給与と合算して特別徴収されます。

経路③ 社会保険の「二以上事業所勤務届」で勤務先に伝わる場合

会社員は本業の勤務先で健康保険・厚生年金に加入しています。
自分の法人からも役員報酬を受け取ると、法人側でも社会保険の加入義務が生じ、「二以上事業所勤務届」の提出が原則必要になり、勤務先に知られるきっかけになり得ます(2026年現在)。

この届出により保険料は両社の報酬を合算して按分され、本業の勤務先にも保険料額の変更などの形で情報が及びます。
役員報酬を受け取らなければ、法人側の社会保険加入義務は生じないのが一般的で、この届出も不要です。

バレにくくする一般的な工夫と、その限界

実務上よく取られる工夫としては、次のようなものがあります。

  • ・役員報酬を取らない(住民税・社会保険の経路を避ける)
  • ・配偶者など家族を代表にして、自分は出資者にとどまる
  • ・本業と競業しない事業内容にする

 

ただし、登記の公開など構造的に隠せない部分がある以上、「絶対にバレない」方法は存在しません。

就業規則違反の状態で発覚すれば懲戒リスクもあるため、可能な限り勤務先のルールに沿った形で進めることを強くおすすめします。
配偶者を代表にする場合も、実態のない名義貸しは税務・法務上の問題になり得る点に注意してください。

会社員が会社設立する5つのメリット

リスクを正しく管理できれば、会社員の法人化には次のようなメリットがあります。

① 給与所得と事業の利益を分けられ、税率をコントロールしやすい

個人の副業利益は給与と合算され、所得税の累進課税(2026年現在、5〜45%の7段階)で課税されます。

法人化すれば副業の利益は法人税(中小法人は15〜23.2%程度)で課税され、給与とは切り離せます。
給与水準が高い会社員ほど、この分離効果は大きくなります。

② 経費にできる範囲が広がる

法人では、役員社宅や出張日当、生命保険料の一部損金算入など、個人の副業にはない経費の選択肢が使えます。
赤字(欠損金)も法人なら10年間繰り越せます(2026年現在、青色申告の場合)。

③ 将来の独立・資産管理会社への布石になる

いずれ独立を考えているなら、会社員のうちに法人を育てておくことで、実績・取引口座・信用を先に積み上げられます。
資産運用の規模が大きい方は、資産管理会社として長期的に活用する道もあります。

④ 有限責任・法人名義の契約や融資が可能になる

法人の債務は原則として出資額の範囲の有限責任です。
また、法人名義で契約・融資・クレジットカード作成ができるため、事業を拡大しやすくなります。

⑤ 相続・贈与対策に活用できる場合がある

資産管理会社を通じて家族へ役員報酬を支払ったり、株式の形で資産を移転したりと、法人は相続・贈与対策の器としても使われます。
ただし効果は資産構成によって大きく異なるため、相続に強い税理士への相談が前提です。

会社員が会社設立するデメリットと注意すべきポイント

一方で、会社員の法人化には特有の注意点があります。
とくに社会保険まわりは誤解が多いため、正確に押さえてください。

設立費用・維持コストがかかる

設立の法定費用は、株式会社で約20万〜25万円、合同会社で約7万〜10万円が目安です(2026年現在)。
株式会社の定款認証手数料は資本金の額などに応じて1万5,000円〜5万円程度で、資本金100万円未満のひとり法人なら要件を満たせば1万5,000円程度で済みます。

また、法人は赤字でも法人住民税の均等割(年7万円程度)が発生します。
法人決算・申告を税理士に依頼する場合は年20万〜40万円程度が目安となり、副業の利益が小さいうちはコスト負けすることもあります。

社会保険の扱い:役員報酬を取ると「二以上事業所勤務届」が原則必要

前述のとおり、本業で社会保険に加入している会社員が自分の法人からも役員報酬を受け取ると、二以上事業所勤務届の提出が原則必要になります(2026年現在)。
保険料は両社の報酬の合算をもとに按分されるため、社会保険料の負担も増えます。

これを避けるため、会社員のマイクロ法人では「役員報酬ゼロ」で運営し、利益を法人に留保する形が多く取られます。
役員報酬をいくらに設定するか(またはゼロにするか)は、税と社会保険の両面から設計が必要な論点です。

「マイクロ法人で社会保険料節約」は会社員には当てはまらない

ネット上でよく見る「マイクロ法人で社会保険料を大幅節約」というスキームは、国民健康保険・国民年金に加入している個人事業主・フリーランス向けのものです。

マイクロ法人から最低限の役員報酬を取って割安に社会保険へ加入する、という仕組みのため、すでに勤務先で厚生年金・健康保険に加入している会社員には効果がありません。

会社員の法人化の目的は、あくまで「税率の分離」や「経費・資産管理の選択肢」にあります。
この違いを混同したまま設立しないよう注意してください。

法人の赤字は給与所得と損益通算できない

個人の副業が事業所得に該当する場合、赤字を給与所得と損益通算できることがあります。
一方、法人化すると法人の赤字はあくまで法人内で繰り越すもので、あなた個人の給与所得と相殺することはできません。

副業が赤字になりがちな段階では、法人化がかえって不利になる場合があります。
黒字が安定してからの法人化が基本と考えましょう。

会社員が副業で会社設立する手順と税金のポイント

設立手順の概要(5ステップ)

設立の流れは、フリーランスの法人化と基本的に同じです。

  1. 会社の基本事項(商号・目的・資本金・決算月など)を決める
  2. 定款を作成し、株式会社は公証役場で認証を受ける
  3. 資本金を払い込む
  4. 法務局で設立登記を申請する
  5. 税務署・都道府県・市区町村へ届出する

 

準備から設立完了までは2〜3週間程度が目安です。
なお、登記申請の代理は司法書士が行う業務のため、設立登記については司法書士に依頼する必要があります。

各ステップの詳細は、会社設立の流れを解説した記事をあわせてご覧ください。

いくらから法人化を検討すべきか

会社員の場合、副業の利益は給与と合算して高い税率で課税されるため、法人化の分岐点は専業のフリーランスより低くなる傾向があります。

給与水準にもよりますが、副業の利益が年300万〜500万円程度で安定してきたら、法人化を検討する価値があるといわれます。

ただし、維持コストや社会保険の扱いを含めた損益分岐点は一人ひとり異なります。
「自分の給与水準ならいくらから有利になるか」は、税理士によるシミュレーションで確認するのが確実です。

まとめ:会社員の会社設立は「ルール確認」と「設計」が9割

会社員でも会社設立は法律上可能で、マイクロ法人をうまく使えば税率の分離や経費の選択肢など大きなメリットがあります。

一方で、登記の公開・住民税・社会保険という3つの経路がある以上、「絶対にバレない」保証はなく、就業規則の確認が出発点になります。

役員報酬の設計や社会保険の扱いなど、会社員の法人化には専門的な論点が多くあります。
設立してから後悔しないよう、検討段階から税理士に相談することをおすすめします。

副業の会社設立・マイクロ法人のご相談は、ヤマザキ税理士事務所へ

春日部市、越谷市、さいたま市を中心に、会社設立・創業融資・節税対策をサポートする税理士事務所。会社員の法人化シミュレーションもご相談いただけます。初回相談無料です。

よくある質問(FAQ)

Q. 会社員が法人設立をしたら会社にバレますか?

知られる可能性がある経路は、登記情報の公開・住民税の増加・社会保険の届出の3つです。
役員報酬を取らないなどの工夫で可能性は下げられますが、登記は公開情報のため「絶対にバレない」方法はありません。
就業規則の確認が先決です。

Q. 会社員でもマイクロ法人を設立できますか?

法律上は可能です。
株式会社も合同会社も1人で設立できます(2026年現在)。
ただし公務員は原則不可で、会社員も就業規則の副業規定の確認が必要です。

Q. 副業でいくらから法人化すべきですか?

給与と合算で課税されるため、副業の利益が年300万〜500万円程度で安定してきたら検討の目安といわれます。
給与水準によって分岐点は変わるため、税理士のシミュレーションがおすすめです。

Q. 副業で法人化すると社会保険はどうなりますか?

自分の法人から役員報酬を受け取ると、二以上事業所勤務届の提出が原則必要になり、保険料は両社の報酬を合算して按分されます(2026年現在)。
役員報酬を取らなければ、法人側の加入義務は生じないのが一般的です。

Q. 副業で法人化したら役員報酬はもらえないのですか?

受け取ること自体は可能です。
ただし住民税や社会保険の届出を通じて勤務先に知られるきっかけになり得るため、報酬ゼロで利益を法人に留保する会社員が多いのが実情です。

Q. 会社員の会社設立にはいくらかかりますか?

法定費用の目安は、株式会社で約20万〜25万円、合同会社で約7万〜10万円です(2026年現在)。
別途、資本金と、赤字でも毎年かかる均等割(年7万円程度)などの維持コストを見込んでください。

Q. 不動産投資の法人化は副業にあたりますか?

不動産投資は資産運用の側面が強く、一定規模までは副業と扱わない会社も多くあります。
一方、いわゆる「5棟10室」とされる事業的規模に達している場合は、副業として申請・届出が必要になるケースが一般的です。
ただし就業規則の定義は会社ごとに異なるため、規模が大きくなる場合や法人化する場合は勤務先への確認が安全です。

Q. 公務員でも会社設立できますか?

国家公務員法・地方公務員法により、営利企業の役員就任や自営は原則制限されています(2026年現在)。
許可なく会社を設立して役員になることはできず、会社員よりも厳しい制約があります。

Q. 配偶者を代表にして会社を設立しても問題ありませんか?

配偶者が実際に経営を担うのであれば、選択肢の1つです。
ただし実態がないのに名義だけ借りる形は、税務上・法務上の問題や、かえって発覚時の心証悪化につながるリスクがあります。
実態に合わせた設計を税理士に相談してください。

監修者

税理士 山﨑 健司(ヤマザキ税理士事務所)
春日部市、越谷市、さいたま市を中心に、会社設立・創業融資・節税対策をサポートする税理士事務所。中小企業・個人事業主の起業支援に豊富な経験を持つ。


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