遺言執行者って何をする人?選任のメリットと義務
遺言執行者とは?
遺言書を作成して満足し、そのまま引き出しに眠らせてはいませんか? 実は、遺言書は「作成すること」と同じくらい、その内容を「誰が実現するか」が非常に重要です。その大役を担うのが、「遺言執行者(いごんしっこうしゃ)」です。
あまり聞き慣れない言葉かもしれませんが、遺言執行者の有無が、相続手続きのスピードと平穏さを大きく左右します。
1. 遺言執行者の役割とは
遺言執行者とは、簡単に言えば「遺言書の内容を具体的に実行する責任者」です。相続が開始した後、相続人に代わって、遺言書に書かれた通りに財産を動かす強力な権限を持ちます。
具体的には、以下のような実務を独占的に行います。
・相続人や財産の調査、財産目録の作成
・預貯金の解約、払い戻し手続き
・不動産の名義変更(相続登記)の申請
・遺贈(相続人以外への寄付など)の実行
・認知の届け出や、推定相続人の廃除といった法的手続き
2. 遺言執行者を選任する3つのメリット
なぜ、家族だけで手続きを進めるのではなく、あえて遺言執行者を指定しておくべきなのでしょうか。
① 相続人全員の署名・実印が不要になる 通常、預貯金の解約には相続人全員の同意書が必要です。しかし、遺言執行者がいれば、他の相続人の協力を得ることなく、執行者の印鑑一つで手続きが進められます。非協力的な相続人がいる場合や、疎遠な親族がいる場合に非常に有効です。
② トラブルの抑止力になる 遺言執行者が指定されている場合、相続人は遺言の対象となった財産を勝手に処分することができなくなります。一部の相続人が勝手に預金を引き出したり、実家を占拠したりする暴走を防ぐことができます。
③ 手続きのスピードと確実性が増す 専門知識を持った人が執行者になれば、複雑な戸籍収集や名義変更の手間をすべて代行してくれるため、遺族は悲しみの中で慣れない事務作業に追われることがなくなります。
3. 遺言執行者の義務と責任
権限が強い分、遺言執行者には重い義務が課せられています。
・通知義務: 就任後、遅滞なく相続人に「私が遺言執行者になりました」という通知と遺言書の内容を知らせなければなりません。
・善管注意義務: 自分の財産以上に、慎重かつ誠実に事務を行わなければなりません。
・報告義務: 相続人から求められた場合や事務が終わった際に、進捗や結果を報告する義務があります。
4. 誰を選任すべきか?
遺言執行者は、成人であれば家族や友人を指名することも可能です。しかし、実務の煩雑さや、他の親族からの「依怙贔屓している」という疑念を避けるためには、弁護士や司法書士、信託銀行などの専門家を指名しておくのが最も安心です。
特に、子供同士の仲が悪い、財産が複雑、寄付をしたいといったケースでは、中立的な立場である専門家の執行者が「防波堤」となり、遺言者の遺志を確実に守ってくれます。
遺言書という「設計図」を現実の「形」にするために、信頼できる執行者を決めておく。それこそが、相続の完成度を高める最後のピースとなります。




