会社設立時の創業融資とは?日本政策金融公庫の審査ポイントを税理士が解説

「会社設立の資金を借りたいけれど、自己資金が少なくても創業融資は受けられるのだろうか」
「制度が変わって、創業融資はなくなったと聞いた」という不安の声もよく耳にします。
結論からいえば、2026年8月現在、日本政策金融公庫の創業融資は「新規開業・スタートアップ支援資金」に一本化されており、形式的な自己資金要件は撤廃されています。
創業融資そのものがなくなったわけではなく、むしろ制度としては使いやすい形に整理されています。
この記事では、現行の創業融資制度の内容、自己資金はいくら必要かという疑問への答え、審査で見られる4つのポイント、申込みの流れと必要書類までを税理士が解説します。
金利などの変動情報は2026年8月現在のものとして、必ず公庫の公式サイトで最新を確認してください。
📌 この記事のポイント
- ・旧「新創業融資制度」は2024年3月で廃止。現行は「新規開業・スタートアップ支援資金」
- ・対象は創業前〜事業開始後おおむね7年以内。限度額7,200万円は「制度上の上限」で、実際の融資額は計画しだい
- ・形式的な自己資金要件は撤廃。ただし審査では自己資金の額と「貯め方」が最重要級
- ・審査の中心は創業計画書。売上根拠と資金繰りの説得力が合否を分ける
- ・自治体の制度融資や補助金との組み合わせも選択肢
会社設立時の創業融資とは?現行制度は「新規開業・スタートアップ支援資金」
創業期の資金調達の王道が、日本政策金融公庫(以下、公庫)の創業者向け融資です。
まず、「制度がなくなったのか」という混乱に正面から答えます。
旧「新創業融資制度」は廃止済み。現行制度に一本化
長く知られてきた「新創業融資制度」は、2024年3月で廃止されました。
その後は「新規開業資金」に統合され、2025年3月に「新規開業・スタートアップ支援資金」へ名称変更されています(2026年8月現在)。
つまり「創業融資がなくなった」のではなく、制度が一本化されて名前が変わっただけです。
古い制度名で調べると情報が混在しているため、現行名称で公庫サイトを確認するのが確実です。
対象者と限度額(開業前〜おおむね7年以内)
対象は、新たに事業を始める人、または事業開始後おおむね7年以内の人です(2026年8月現在)。
「創業前」から申し込めるのが大きな特徴で、会社設立前の資金計画づくりの段階から使えます。
融資限度額は7,200万円(うち運転資金4,800万円)です。
ただしこれはあくまで制度上の上限で、「7,200万円まで借りられる」という意味ではありません。実際の融資額は、事業計画や自己資金などをもとに個別に決まります。
無担保・無保証人の取扱い・金利は公庫サイトで最新確認
創業期の方(新たに事業を始める方、または事業開始後に税務申告を2期終えていない方)は、原則として無担保・無保証人(経営者保証なし)で利用でき、創業者が使いやすい設計になっています(2026年8月現在)。3期目以降の方は、担保・保証人の扱いが個別の相談になります。
金利は他の借入より低めに設定されていますが、変動するため、最新の利率は公庫の公式サイトで確認してください。
返済期間は設備資金が20年以内(うち据置期間5年以内)、運転資金が10年以内で、返済開始を遅らせる据置期間を設定できます(2026年8月現在)。
条件の詳細は申込み時点の制度内容によります。
自己資金はいくら必要?
創業融資で最も多い質問が、自己資金についてです。
「要件」と「審査実務」を分けて理解するのがポイントです。
形式的な自己資金要件は撤廃された
旧制度には形式的な自己資金の要件がありましたが、現行制度では撤廃されています(2026年8月現在)。
「自己資金が10分の1ないから申し込めない」という門前払いの仕組みは、制度上はなくなりました。
それでも審査では自己資金が最重要級
ただし、ここからが実務の話です。
要件が撤廃されても、審査では自己資金の額と「貯め方」が最重要級のチェックポイントです。
自己資金は「創業への本気度と計画性」を示す証拠として見られます。
毎月コツコツ貯めた通帳履歴は高く評価される一方、審査直前に親族から一時的に入金する「見せ金」は通帳の動きから見抜かれ、大きなマイナス評価になります。
自己資金100万〜200万円で受けられる?
「自己資金100万円(200万円)で受けられますか」という質問には、「受けられる場合がある」が誠実な答えです。
鍵は自己資金の絶対額よりも、借入希望額とのバランスと事業計画の説得力です。
なお、「自己資金の何倍まで借りられる」という公式基準は現行制度にはありません。
実務感覚として自己資金の数倍程度までといわれることがありますが、これも事業計画しだいで変わるため、鵜呑みにしないでください。
創業融資の審査で見られる4つのポイント
公庫の審査で見られる主なポイントは、次の4つに整理できます(一般論・2026年8月現在)。
- 自己資金の額と貯め方(計画的に準備してきたか)
- 事業経験・経歴(始める事業と関連する経験があるか)
- 事業計画の実現性(売上予測の根拠・資金繰りの妥当性)
- 信用情報(既存の借入状況・クレジット等の延滞歴)
この4つを束ねる書類が創業計画書です。
審査の合否を分けるのは、売上予測と資金繰りに根拠のある創業計画書です。
審査に落ちやすいパターン
逆に、審査でつまずきやすい典型例は次のとおりです。
- ・売上予測に根拠がない(「たぶん売れる」レベルの計画)
- ・見せ金など自己資金の出所が説明できない
- ・経験のない業種なのに、経験を補う準備が示せていない
- ・クレジットや税金・公共料金の延滞歴がある
審査通過率の公表数値はなく、「何%通る」といった情報は当てになりません。
落ちやすい要素を1つずつ潰すことが、確実な対策です。
申込みの流れと必要書類
創業計画書が最重要書類
必要書類の中心は、公庫様式の創業計画書です。
ほかに、設備資金の場合は見積書、通帳、本人確認書類などを用意します(2026年8月現在)。
創業計画書には、創業の動機、経営者の経歴、取扱商品・サービス、必要な資金と調達方法、事業の見通しなどを記載します。
どの欄も「審査ポイント4つ」に対応しており、書き方しだいで印象が大きく変わります。
特に見られるのは、売上予測の根拠と資金繰りです。
「客単価×客数×稼働日数」のように売上を分解して根拠を示し、月ごとの入出金で返済原資があることを見せるのが基本の考え方です。
申込み→面談→審査→融資実行の流れ(設立前でも申込可能)
申込み後は、公庫の担当者との面談があり、審査を経て融資実行という流れです。
面談では創業計画書の内容を自分の言葉で説明できることが重要です。
面談で聞かれるのは、計画書に書いた数字の根拠や、想定どおりに売上が立たなかった場合の対応策などです。
提出前に第三者へ説明する練習をしておくと、本番で落ち着いて答えられます。
申込みは法人設立前でも可能で、むしろ創業前の申込みが制度の想定です(2026年8月現在)。
設立登記や口座開設のスケジュールと並行して、早めに動き始めましょう。
公庫以外の選択肢|制度融資・補助金との組み合わせ
制度融資とは(自治体×保証協会×金融機関)
公庫と並ぶ創業資金の選択肢が、制度融資です。
都道府県・市区町村と信用保証協会、民間金融機関が連携する融資で、自治体による利子や保証料の補助が受けられる場合があります(2026年8月現在)。
公庫の融資と制度融資の違いを整理すると、次のとおりです。
公庫の創業融資と制度融資の比較
| 項目 | 公庫の創業融資 | 制度融資 |
|---|---|---|
| 仕組み | 政府系金融機関からの直接融資 | 自治体・信用保証協会・金融機関の連携 |
| 窓口 | 日本政策金融公庫 | 金融機関・自治体(地域により異なる) |
| 特徴 | 創業前から申込可・無担保無保証の取扱いあり | 自治体による利子・保証料の補助がある場合も |
| 確認先 | 公庫公式サイト | 本店所在地の都道府県・市区町村 |
*スライドすることで表の全てが読めます。
埼玉県や県内市町村にも創業者向けの制度がありますので、本店所在地の自治体で確認してください。
公庫と制度融資の併用が検討されるケースもあります。
補助金は後払い。融資でつなぐ組み合わせが王道
補助金は原則後払いのため、先に支払う資金は融資で確保し、補助金で回収するのが創業期の王道の組み合わせです。
創業期に使える補助金は、補助金を解説した記事をご覧ください。
創業融資を成功させるコツ
計画の数値根拠は専門家と作る
売上予測・資金繰り・返済計画の数値づくりは、税理士の得意分野です。
第三者の視点で計画の弱点を潰しておくことが、面談での説得力に直結します。
国の認定を受けた経営革新等支援機関(認定支援機関)である税理士なら、創業計画の作成支援から融資後の経営サポートまで一貫して伴走できます。
依頼先を選ぶ際の1つの目安にしてください。
設立前の相談が最も効果的
資本金をいくらにするか、自己資金をどう準備し説明するか、いつ申し込むかは、設立前の段階から検討しておきたい項目です。
「登記が終わってから」ではなく、会社設立の計画段階で税理士に相談するのが、創業融資成功への最短ルートです。
まとめ:現行制度を正しく知り、計画書で勝負する
公庫の創業融資は「新規開業・スタートアップ支援資金」として現役で、創業前〜開業後おおむね7年以内の方が対象です(2026年8月現在)。
形式的な自己資金要件は撤廃されましたが、審査では自己資金の額と貯め方、そして根拠ある創業計画書が合否を分けます。
制度融資や補助金との組み合わせまで含めた資金調達の設計は、創業期の最重要テーマです。
自己資金に不安がある方こそ、早めに税理士へご相談ください。
創業融資・資金調達のご相談は、ヤマザキ税理士事務所へ
春日部市、越谷市、さいたま市を中心に、会社設立・創業融資・節税対策をサポートする税理士事務所。自己資金と資本金の設計、補助金との組み合わせもご相談いただけます。初回相談無料です。
よくある質問(FAQ)
Q. 新創業融資制度はなくなったのですか?
旧「新創業融資制度」は2024年3月で廃止されましたが、創業融資自体はなくなっていません。
現行は「新規開業・スタートアップ支援資金」(2025年3月に名称変更)に一本化されています(2026年8月現在)。
Q. 創業融資はいくらまで借りられますか?
制度上の限度額は7,200万円(うち運転資金4,800万円)です(2026年8月現在)。
ただし実際の融資額は事業計画や自己資金をもとに個別に決まり、限度額まで借りられるわけではありません。
Q. 自己資金なしでも創業融資は受けられますか?
形式的な自己資金要件は撤廃されているため、申込み自体は可能です。
ただし審査では自己資金が最重要級に見られるため、自己資金なしでの融資はかなり難しいのが実情です。
Q. 自己資金100万円で創業融資は受けられますか?
受けられる場合があります。
鍵は借入希望額とのバランスと事業計画の説得力です。計画しだいで結果は変わるため、事前に専門家と計画を作り込みましょう。
Q. 創業融資は自己資金の何倍まで借りられますか?
「何倍まで」という公式基準は現行制度にはありません(2026年8月現在)。
実務感覚の目安が語られることはありますが、実際は事業計画しだいです。
Q. 創業融資は会社設立前でも申し込めますか?
申し込めます。創業前の申込みはむしろ制度の想定で、設立前の資金計画段階から利用できます(2026年8月現在)。
Q. 開業して2年目でも創業融資を受けられますか?
受けられます。対象は事業開始後おおむね7年以内のため、2年目は十分対象です(2026年8月現在)。
開業後の申込みでは、直近の実績も審査材料になります。
Q. 創業融資に保証人は必要ですか?
創業期(税務申告を2期終えていない方)であれば、原則として無担保・無保証人(経営者保証なし)で利用できます(2026年8月現在)。3期目以降は個別の相談になります。
適用条件の詳細は公庫に確認してください。
Q. 創業融資の金利はどれくらいですか?
他の借入より低めに設定されていますが、金利は変動します。
最新の利率は日本政策金融公庫の公式サイトで確認してください。
Q. 創業融資は返済不要ですか?
いいえ、融資は借入のため返済が必要です。
返済不要のお金は補助金・助成金との混同です。創業期に使える補助金は、補助金を解説した記事をご覧ください。
監修者
税理士 山﨑 健司(ヤマザキ税理士事務所)
春日部市、越谷市、さいたま市を中心に、会社設立・創業融資・節税対策をサポートする税理士事務所。中小企業・個人事業主の起業支援に豊富な経験を持つ。




