会社設立の資本金はいくらにすべき?消費税・融資・信用への影響を踏まえた判断基準|税理士が解説

「資本金は1円でもいいと聞くけれど、実際のところいくらにすればいいのだろう」
会社設立の準備で、ほぼ全員が悩むのが資本金の金額です。
結論からいえば、資本金は1円でも設立できますが、消費税・均等割・融資・信用の4つの観点から逆算して決めるのが正解です。
特に「1,000万円の壁」は、未満か以上かの1円差で税負担が大きく変わる重要ポイントです。
この記事では、資本金の基本と相場観、1,000万円の壁の正確な中身、融資・信用への影響、払い込みの実務までを税理士が解説します。
金額・制度は2026年現在のものです。
📌 この記事のポイント
- ・資本金の最低額は1円。ただし1円設立は信用・資金面のデメリットが大きい
- ・新設法人では100万〜300万円程度に設定するケースが多いといわれる
- ・事業年度開始日の資本金1,000万円未満なら消費税は原則免税。均等割は1,000万円以下で最低水準(年7万円程度)
- ・創業融資では資本金の出どころ(自己資金の貯め方)まで見られる。見せ金は絶対NG
- ・資本金は設立後、事業資金として使ってよい
資本金とは?1円でも会社は作れるのか
資本金とは(会社の元手)
資本金とは、株主(発起人)が会社に出資した、事業の元手となるお金のことです。
「使ってはいけないお金」と誤解されがちですが、設立後は設備の購入・仕入・経費の支払いなど、事業資金として自由に使えます(2026年現在)。
最低額は1円。ただし1円設立のデメリットは大きい
会社法上、資本金の最低額は1円で、株式会社も合同会社も1円から設立できます(2026年現在)。
しかし、実際に1円で設立するのはおすすめできません。
- ・登記情報で資本金が公開されるため、取引先・金融機関からの信用を得にくい
- ・法人口座の開設審査で不利になる場合がある
- ・元手がないため、設立直後の支払いで即座に資金が尽きる(債務超過に陥りやすい)
「1円でも作れる」は制度上の話であって、「1円で作るべき」ではありません。
では、いくらにすべきかを次章で考えます。
資本金の目安はいくら?相場と判断基準
100万〜300万円程度に設定するケースが多い
新設法人の資本金は、100万〜300万円程度に設定するケースが多いといわれます(2026年現在)。
ただしこれはあくまで傾向で、正解は事業の内容と資金計画によって変わります。
判断基準① 当面の運転資金3〜6か月分程度
最も実務的な目安は、売上が安定するまでの運転資金です。
家賃・仕入・人件費など毎月の支出の3〜6か月分程度を資本金として確保しておくと、設立直後の資金繰りに余裕が生まれるといわれます。
判断基準②〜④ 税金・融資・信用
残る3つの基準は、この後の章で詳しく解説します。
- 税金の境目:消費税の免税・均等割に関わる「1,000万円の壁」(次章)
- 融資:創業融資では自己資金=資本金の出どころまで見られる
- 信用・実務:法人口座の開設、取引先の与信審査、許認可業種の財産要件
4つの基準を総合すると、「運転資金を賄える額を、1,000万円のラインを意識しながら設定する」のが基本の考え方になります。
資本金1,000万円の壁|税金への影響【最重要】
資本金の設計で最も重要なのが、1,000万円のラインです。
「未満」と「以下」で判定が異なる点まで、正確に押さえてください(2026年現在)。
1,000万円以上だと消費税の免税が受けられない
新設法人は基準期間がないため、事業年度開始日の資本金が1,000万円以上だと、設立当初の消費税の免税が受けられません。
逆に、資本金1,000万円未満なら、特定期間の判定などの要件を満たすことで最大2年程度の免税を受けられる場合があります(2026年現在)。
ただし、適格請求書発行事業者(インボイス発行事業者)に登録すると、資本金の額にかかわらず課税事業者になります。取引先から登録を求められることの多いBtoBの会社は、「免税=得」と単純に考えず、インボイス登録の要否とあわせて判断してください。免税の詳しい仕組みは、消費税免除を解説した記事をご覧ください。
なお、1期目の途中で増資しても、2期目の開始日に1,000万円以上だと2期目は課税になるため、増資のタイミングにも注意が必要です。
均等割は1,000万円以下なら年7万円程度
法人住民税の均等割は、資本金等の額が1,000万円以下・従業員50人以下であれば、最低水準の年7万円程度で済みます(2026年現在)。
1,000万円を超えると均等割の額が上がるため、こちらは「以下」がラインです。
消費税は「1,000万円未満」、均等割は「1,000万円以下」と、境目の表現が微妙に異なります。
2つの壁を整理すると次のとおりです。
資本金1,000万円の2つの壁
| 税金 | 有利になるライン | 判定のポイント |
|---|---|---|
| 消費税の免税 | 1,000万円「未満」 | 事業年度開始日の資本金で判定 |
| 均等割(最低水準の年7万円程度) | 1,000万円「以下」 | 資本金等の額+従業員50人以下 |
*スライドすることで表の全てが読めます。
実務では「1,000万円より十分小さい額」にしておけば、両方の壁を安全にクリアできます。
登録免許税・定款認証手数料も資本金で変わる
設立費用も資本金に連動します(2026年現在)。
登録免許税は資本金の0.7%と最低額(株式会社15万円・合同会社6万円)のいずれか高い方のため、資本金が大きいと登録免許税も増えます。
また、株式会社の定款認証手数料も資本金の額に応じて変わり、資本金100万円未満は3万円(一定の要件を満たせば1万5,000円)、100万円以上300万円未満は4万円、それ以外は5万円です。
資本金は「税金と設立費用の両方を動かすダイヤル」だと理解してください。
融資・信用への影響
創業融資では資本金の「貯め方」まで見られる
日本政策金融公庫の創業融資などでは、資本金は自己資金の証拠として審査の重要材料になります。
見られるのは金額だけではなく、コツコツ貯めてきた通帳履歴などの「貯め方」です(2026年現在)。
借入希望額とのバランスも重視されるため、融資を予定しているなら、資本金の設計は創業計画とセットで考えましょう。
創業融資の審査ポイントは、創業融資を解説した記事をご覧ください。
見せ金は絶対NG
資本金を大きく見せるために、一時的にお金を借りて払い込み、設立後すぐ引き出して返す行為は「見せ金」と呼ばれます。
見せ金による払込みは違法性を問われるリスクがあり、融資審査でも通帳の動きから見抜かれます。
信用のつもりで行った見せ金が、逆に会社と経営者の信用を根本から壊します。
資本金は、実態のある自己資金の範囲で設定してください。
法人口座・取引審査・許認可業種の財産要件
資本金は登記で公開されるため、法人口座の開設審査や取引先の与信審査で参照されます。
また、建設業・人材派遣・有料職業紹介などの許認可業種には、最低資本や財産的基礎の要件があるものが存在します(2026年現在)。要件額は業種により異なるため、許認可の窓口や専門家に必ず確認してください。
資本金の払い込み手続きと実務
個人口座への振込→通帳コピー→払込証明書
会社の口座は登記完了後にしか作れないため、資本金は発起人の個人口座に振り込みます。
その通帳コピー(表紙・振込ページ等)と「払込があったことを証する書面(払込証明書)」を作成し、登記申請に使います(2026年現在)。
払込みは定款作成日以後に行うのが原則です。
タイミングを誤るとやり直しになるため、定款作成→払込み→登記申請の順番を守ってください。
資本金は設立後に使ってよい
払い込んだ資本金は、登記完了後は会社の事業資金として使えます。
設備の購入・仕入・家賃・広告費など、事業に必要な支出に充てて問題ありません。使った分は帳簿に記録し、決算で適切に処理します。
資本準備金の活用(概要)
払込額のうち2分の1を超えない額は、資本金に計上せず「資本準備金」とすることができます(2026年現在)。
たとえば1,200万円を払い込み、資本金600万円・資本準備金600万円とすれば、消費税の免税判定(資本金のみで判定)では1,000万円未満として扱われます。ただし法人住民税の均等割は「資本金等の額」と「資本金+資本準備金」の大きいほうで判定するため、この例では1,200万円で判定され、年7万円の最低水準にはなりません。資本準備金は消費税には効いても均等割には効かない点に注意し、活用する場合は税理士に相談してください。
資本金を決めるときのよくある失敗
大きくしすぎ・小さくしすぎの両方に落とし穴
資本金を大きくしすぎると、消費税の免税を逃したり、均等割・登録免許税が増えたりと、税負担・費用の面で不利になり得ます。
逆に小さくしすぎると、運転資金が足りず設立直後に資金ショートしたり、口座開設や取引審査で信用不足になったりします。
「見栄で大きく」も「節約で小さく」も、どちらも失敗のもとです。
4つの判断基準に沿って、自社の数字から逆算しましょう。
後から変えられるが、登記・税務コストがかかる
資本金は設立後に増資・減資で変更できます。
ただし変更登記の費用や税務上の論点が生じるため、「とりあえず設立して後で調整」はコスト高になりがちです(2026年現在)。最初の設計に時間をかける価値があります。
まとめ:資本金は「税金×融資×信用」から逆算して決める
資本金は1円でも設立できますが、実務では運転資金3〜6か月分程度を目安に、100万〜300万円程度とするケースが多いといわれます。
消費税は1,000万円未満・均等割は1,000万円以下がラインで、融資では貯め方まで見られ、見せ金は厳禁です。
資本金は、消費税・均等割・設立費用・融資に影響する「税理士マター」です。
決めてから相談するのではなく、決める前にご相談ください。
資本金の設計・会社設立のご相談は、ヤマザキ税理士事務所へ
春日部市、越谷市、さいたま市を中心に、会社設立・創業融資・節税対策をサポートする税理士事務所。事業計画に合わせた資本金の逆算もご相談いただけます。初回相談無料です。
よくある質問(FAQ)
Q. 資本金はいくらあれば株式会社を作れますか?
会社法上は1円から設立できます(2026年現在)。
ただし信用・資金面のデメリットが大きいため、実務では運転資金を賄える額を設定するのが一般的です。
Q. 会社設立の資本金はいくらがいいですか?
運転資金3〜6か月分程度を目安に、消費税・均等割の境目(1,000万円)、融資、信用の4つの観点から逆算します。
新設法人では100万〜300万円程度とするケースが多いといわれます。
Q. 資本金1円で設立するデメリットは何ですか?
資本金は登記で公開されるため信用を得にくく、法人口座の開設で不利になる場合があり、元手がないため設立直後に資金が尽きやすい点です。
制度上可能でも、実務ではおすすめできません。
Q. 資本金1,000万円にすると何が変わりますか?
事業年度開始日の資本金が1,000万円以上だと消費税の免税が受けられず、資本金等の額が1,000万円を超えると均等割も最低水準(年7万円程度)より上がります(2026年現在)。
税負担の面では1,000万円より十分小さい額が有利です。
Q. 資本金は設立後に使ってもいいのですか?
使えます。資本金は会社の事業資金のため、設備・仕入・経費などに充てて問題ありません。
「口座に置いたままにしなければならないお金」ではありません。
Q. 資本金300万円だと融資はいくら借りられますか?
「資本金(自己資金)の何倍まで」という公式基準はなく、融資額は事業計画しだいで個別に決まります。
借入希望額とのバランスと計画の説得力が鍵のため、専門家と計画を作り込みましょう。
Q. 見せ金とは何ですか?なぜダメなのですか?
一時的に借りたお金で資本金を払い込み、設立後すぐ引き出して返す行為です。
違法性を問われるリスクがあるうえ、融資審査でも通帳の動きから見抜かれ、信用を大きく損ないます。
Q. 資本金と資本準備金の違いは何ですか?
どちらも払込みによる会社の元手ですが、払込額の2分の1を超えない額は資本金に計上せず資本準備金にできます(2026年現在)。
資本準備金に振り分けると消費税の判定(資本金のみ)には有利ですが、均等割は「資本金+資本準備金」でも判定されるため効果がありません。活用は税理士に相談してください。
Q. 合同会社の資本金はいくらが多いですか?
合同会社も1円から設立でき、事業規模に応じて設定されるため一概にはいえません。
考え方は株式会社と同じで、運転資金・税金の境目・信用から逆算してください。
Q. 資本金は後から増やせますか?
増資は設立後も可能です。ただし変更登記の費用や税務上の論点が生じます(2026年現在)。
消費税の免税に影響する場合もあるため、増資のタイミングは税理士に相談してください。
監修者
税理士 山﨑 健司(ヤマザキ税理士事務所)
春日部市、越谷市、さいたま市を中心に、会社設立・創業融資・節税対策をサポートする税理士事務所。中小企業・個人事業主の起業支援に豊富な経験を持つ。




