会社設立後の消費税免除とは?2年間の免税期間の条件と設立タイミングの注意点|税理士が解説

「会社を設立すれば消費税が2年間免除されると聞いたけれど、インボイスがあると意味がないのだろうか」
法人成りを検討中の個人事業主の方から、最近特に多くいただく質問です。
結論からいえば、資本金1,000万円未満などの要件を満たせば最大2年程度の免税は今も可能ですが、インボイス発行事業者に登録すると免税の恩恵は受けられません。
つまり「免税を使えるかどうか」は、制度の要件と取引先との関係の両方で決まります。
この記事では、会社設立後に消費税が免除される仕組み、1期目・2期目・3期目の判定、インボイス制度との関係、免税期間を最大化する設立タイミングの工夫までを税理士が解説します。
制度の内容は2026年現在のものです。
📌 この記事のポイント
- ・新設法人は資本金1,000万円未満なら1期目は原則免税(2026年現在)
- ・2期目は「特定期間」の課税売上高または給与等支払額で判定される
- ・インボイス登録すると課税事業者になり、免税は受けられない
- ・2割特例は2026年9月30日の属する課税期間で終了。新設法人は後継の3割特例の対象外
- ・決算月と資本金の設計しだいで、免税期間の長さは大きく変わる
会社設立で消費税が免除される仕組みとは?
まず、「なぜ会社を設立すると消費税が免除されるのか」という基本の仕組みから解説します。
消費税の納税義務は「基準期間の課税売上高1,000万円」で決まる
消費税は、基準期間(前々事業年度)の課税売上高が1,000万円以下であれば、納税義務が免除されるのが原則です(2026年現在)。
つまり「2年前の売上」で今年の納税義務が決まる、という仕組みです。
新設法人は基準期間がないから免税になる(資本金1,000万円未満の要件)
設立したばかりの法人には「2年前」が存在しないため、基準期間の売上で判定できません。
そこで新設法人は、事業年度開始日の資本金が1,000万円未満であれば、1期目は原則として免税とされています(2026年現在)。
逆に、資本金1,000万円以上で設立すると、1期目から課税事業者になります。
「会社設立で消費税が最大2年免除される」といわれるのは、この仕組みが1期目・2期目に適用され得るためです。
免税期間は本当に2年間?1期目・2期目・3期目の判定を整理
「2年間免税」とよくいわれますが、正確には期ごとに判定があり、必ず2年間免税になるわけではありません。
1期目から3期目までの判定を順に整理します。
1期目:資本金1,000万円未満なら原則免税
前述のとおり、事業年度開始日の資本金が1,000万円未満であれば、1期目は原則免税です。
1期目の途中で増資して1,000万円以上になっても、2期目の開始日に1,000万円以上だと2期目は課税になるため、増資のタイミングには注意が必要です。
2期目:特定期間(最初の6か月)の売上と給与で判定される
2期目は、「特定期間」=1期目の開始日から6か月間の実績で判定されます。
特定期間の課税売上高が1,000万円以下であれば、2期目も免税です。
ここで重要なのは、判定に給与を使えることです。
特定期間の課税売上高が1,000万円を超えても、給与等支払額が1,000万円以下なら免税を維持できます(判定は課税売上高に代えて給与等支払額を用いることができます・2026年現在)。
2期目の判定を整理すると、次のフローになります。
2期目の消費税の判定
| 特定期間(1期目最初の6か月)の状況 | 2期目の消費税 |
|---|---|
| 課税売上高が1,000万円以下 | 免税を維持できる |
| 課税売上高は1,000万円超だが、給与等支払額が1,000万円以下 | 給与等支払額での判定を選べば免税を維持できる |
| 課税売上高・給与等支払額の両方が1,000万円超 | 2期目から課税事業者になる |
| 1期目が7か月以下 (短期事業年度) |
特定期間の判定自体がなく、資本金要件を満たせば免税 |
ひとり法人・マイクロ法人では、役員報酬を抑えることで給与等支払額が1,000万円以下に収まるケースが多く、売上が伸びても2期目の免税を維持できる場合があります。
自社がどのパターンに当たるかは、設立前に確認しておきましょう。
3期目以降:1期目の売上で通常判定に戻る
3期目からは、基準期間(=1期目)の課税売上高による通常の判定に戻ります。
1期目の課税売上高が1,000万円を超えていれば3期目から課税事業者、1,000万円以下なら3期目も免税です(2026年現在)。
大企業の子会社などは例外(特定新規設立法人)
資本金1,000万円未満でも、課税売上高5億円超の法人などに株式の50%超を保有されて設立された法人(特定新規設立法人)は、設立当初から課税事業者になります(2026年現在)。
大企業の子会社や、大規模なグループ内での新会社設立ではこの例外に注意してください。
インボイス制度で免税はどう変わった?登録すべきかの判断
ここまでの免税の仕組みは今も有効ですが、インボイス制度によって「免税を選べるかどうか」の実務は大きく変わりました。
インボイス登録すると課税事業者になり免税は受けられない
適格請求書(インボイス)発行事業者に登録すると、免税の要件を満たしていても課税事業者になります(2026年現在)。
つまり「設立2年の免税」と「インボイス登録」は両立せず、どちらを取るかの選択になります。
免税を選べるかは取引先次第
売上先が課税事業者(企業など)中心のBtoBビジネスでは、インボイスを発行できないと取引先の仕入税額控除に影響するため、登録を求められることが多く、免税を選びにくいのが実情です。
一方、売上先が一般消費者中心(BtoC)や免税事業者中心であれば、登録せずに免税の恩恵を受けられる可能性が高くなります。
「免税期間を取れるかどうか」は、制度だけでなく自社の取引構造で決まる、と考えてください。
迷う場合は、売上構成をもとに税理士に相談するのが確実です。
2割特例は2026年9月30日の属する課税期間で終了
免税事業者からインボイス登録した事業者の負担を抑える「2割特例」は、令和8年度税制改正で延長されませんでした。
2割特例は2026年9月30日の属する課税期間をもって終了し、新設法人は後継の3割特例の対象になりません(3割特例は個人事業主が対象・2026年現在)。
これから会社を設立してインボイス登録する場合、2割特例による負担軽減は前提にできない、という点は資金計画上とても重要です。
納税額の見込みは、簡易課税・本則課税の選択も含めて設立時に試算しておきましょう。
免税期間を最大化する設立タイミングの工夫
免税を活用できる前提の方にとっては、「いつ設立するか」「決算月をいつにするか」で免税期間の長さが変わります。
代表的な工夫を4つ紹介します。
① 1期目をできるだけ長くする決算月の決め方
免税は「期」単位で判定されるため、1期目が長いほど免税期間も長くなります。
たとえば設立直後に決算月が来る設計だと、1期目が数か月で終わってしまい、免税のメリットを十分に受けられません。
設立月から見て約12か月後に決算月を置くのが基本形です。
具体例として、4月に設立して3月決算にすれば1期目は約12か月確保できますが、同じ4月設立で6月決算にすると1期目はわずか3か月程度で終わります。
決算月は登記時に決める事項のため、設立前の設計が重要です。
② 1期目を7か月以下にすると2期目の特定期間判定がなくなるケース
逆に、あえて1期目を7か月以下の短期事業年度にすると、特定期間の判定自体が行われません。
最初の6か月で売上も給与も1,000万円を超える見込みの事業では、「短い1期目+フルの2期目」の組み合わせのほうが免税期間の合計が長くなる場合があります(2026年現在)。
どちらが有利かは売上・給与の見込みによって変わる、やや高度な設計です。
自社の数字でどちらが得かは、税理士に試算を依頼してください。
③ 個人事業で課税事業者になる直前の法人化
個人事業の課税売上高が1,000万円を超えると、原則2年後から課税事業者になります。
そのタイミングの直前に法人成りすれば、個人としての課税事業者期間を避けつつ、法人の免税期間につなげられる場合があります。
④ 資本金は1,000万円未満に設定する
免税の大前提として、資本金は1,000万円未満で設立します。
信用力のために資本金を大きくしたい場合も、免税を優先するなら1,000万円未満に抑え、増資は2期目の開始日以降のタイミングを慎重に検討してください。
法人成りで見落としやすい消費税の注意点
個人事業の資産を法人へ引き継ぐときの消費税
法人成りで在庫(棚卸資産)や車両などを法人へ売却・現物出資で引き継ぐと、個人側で課税売上になる場合があります(みなし譲渡等・2026年現在)。
個人が課税事業者のまま資産を引き継ぐと、最後の消費税申告に影響するため、引き継ぐ資産が多い方は事前に税理士へ確認してください。
免税でも「もらった消費税」は値引き圧力と隣り合わせ
免税事業者は消費税の納税義務がない一方、インボイスを発行できないため、課税事業者の取引先から値引き交渉や取引見直しを受けるリスクがあります。
免税の節税メリットと、取引への影響を天秤にかけて判断することが大切です。
簡易課税・本則課税の選択は設立時から設計する
課税事業者になった後の納税額は、簡易課税と本則課税のどちらを選ぶかで変わります。
選択には届出の期限があり、後から変更できない期間もあるため、免税期間の終了を見据えて設立時から設計しておくのが理想です。
詳細な有利判定は税理士にご相談ください。
まとめ:免税の可否は「要件×取引先」で決まる
会社設立の消費税免除は、資本金1,000万円未満・特定期間の判定などの要件を満たせば、2026年現在も最大2年程度活用できます。
ただしインボイス登録すると免税は受けられず、2割特例も2026年9月30日の属する課税期間で終了するため、「免税を取れるか」は取引先との関係を含めた総合判断になりました。
決算月・資本金・登録の要否をどう設計するかで、設立後数年の資金繰りは大きく変わります。
会社設立のタイミングを決める前に、消費税の設計まで含めて税理士に相談してください。
会社設立のタイミング・消費税の設計のご相談は、ヤマザキ税理士事務所へ
春日部市、越谷市、さいたま市を中心に、会社設立・創業融資・節税対策をサポートする税理士事務所。免税期間を活かした設立プランもご相談いただけます。初回相談無料です。
よくある質問(FAQ)
Q. 法人成りすると消費税は免税になりますか?
事業年度開始日の資本金が1,000万円未満であれば、1期目は原則免税です(2026年現在)。
2期目は特定期間の判定があり、インボイス登録すると免税は受けられません。
Q. 法人化すると2年間は消費税が免税というのは本当ですか?
要件を満たせば最大2年程度免税になりますが、必ず2年ではありません。
2期目は特定期間(最初の6か月)の課税売上高または給与等支払額が1,000万円を超えると課税になる場合があります。
Q. 法人設立2期目の消費税は免税ですか?
特定期間の課税売上高が1,000万円以下、または給与等支払額が1,000万円以下なら免税を維持できます(2026年現在)。
1期目が7か月以下の場合は、特定期間の判定自体がありません。
Q. 法人3期目から消費税はどうなりますか?
3期目は基準期間(1期目)の課税売上高による通常判定に戻ります。
1期目の課税売上高が1,000万円超なら3期目から課税、1,000万円以下なら3期目も免税です。
Q. 資本金1,000万円以上で設立するとどうなりますか?
基準期間がなくても、1期目から課税事業者になります(2026年現在)。
免税を重視するなら、資本金は1,000万円未満で設立し、増資のタイミングにも注意してください。
Q. 免税事業者でもインボイスの登録は必要ですか?
登録は義務ではなく任意です。
ただし課税事業者への売上が中心の場合、インボイスを発行できないと取引に影響し得るため、実質的に登録が必要になるケースが多くあります。
Q. インボイス登録後に免税事業者へ戻ることはできますか?
登録を取りやめる手続きにより、免税事業者に戻れる場合があります。
ただし届出の期限や戻れない期間などの制約があるため、実行前に必ず税理士へ確認してください。
Q. 2割特例はいつまで使えますか?
令和8年度税制改正で延長されず、2026年9月30日の属する課税期間をもって終了します。
後継の3割特例は個人事業主が対象で、新設法人は対象外です(2026年現在)。
Q. マイクロ法人でも消費税は免税になりますか?
資本金1,000万円未満などの要件を満たせば、法人の規模にかかわらず免税の対象になります。
役員報酬を抑えたマイクロ法人は、給与等支払額の判定でも有利になりやすい形です。
Q. 個人事業の在庫や車を法人に引き継ぐと消費税はかかりますか?
売却や現物出資による引き継ぎは、個人側で課税売上になる場合があります(みなし譲渡等)。
引き継ぐ資産の種類・金額によって扱いが変わるため、事前に税理士へ確認してください。
監修者
税理士 山﨑 健司(ヤマザキ税理士事務所)
春日部市、越谷市、さいたま市を中心に、会社設立・創業融資・節税対策をサポートする税理士事務所。中小企業・個人事業主の起業支援に豊富な経験を持つ。




