会社設立後の役員報酬はいつから決める?設定方法・届出期限・節税効果を解説|税理士が解説

会社設立後の役員報酬の決め方と届出期限

「会社を設立したけれど、自分の給料はいつから、いくらで払えばいいのだろう」

設立直後の社長がまず直面するのが、この役員報酬の問題です。
結論からいえば、役員報酬は設立から3か月以内に決める必要があり、一度決めると原則として次の定時改定まで変更できません。
このルールを知らずに決めると、経費にならない給与を払い続けることになりかねません。

この記事では、役員報酬をいつから・どう決めるか、定期同額給与のルール、役員賞与の届出期限、報酬ゼロの扱いと社会保険、節税効果までを税理士が解説します。
制度の内容は2026年現在のものです。

📌 この記事のポイント

  • ・役員報酬は設立から3か月以内に決定し、支給を開始するのが実務原則
  • ・損金にするには「定期同額給与」(毎月同額)が基本。期中の増減は原則不可
  • ・役員賞与を経費にするには「事前確定届出給与」の届出が必要(新設法人は設立から2か月以内)
  • ・役員報酬ゼロは適法だが、原則として社会保険に加入できない
  • ・金額は利益予測・税金・社会保険料・生活費のバランスで決める

会社設立後の役員報酬はいつから?決定期限は「設立から3か月以内」

新設法人の役員報酬は、設立から3か月以内に決定し、支給を開始するのが実務上の原則です(2026年現在)。
まずはこの期限の理由と、決め方の手続きを押さえましょう。

なぜ3か月以内なのか(定期同額給与の損金ルールとの関係)

役員報酬を法人の損金(経費)にするには、「定期同額給与」=毎月同じ時期に同じ額を支給する形が基本です。
そして定期同額給与の改定は、原則として事業年度開始から3か月以内しか認められていません。

新設法人はこのルールに沿って、設立から3か月以内に報酬を決めて支給を始めることで、初年度から損金算入の要件を整えます。
決定が遅れるほど、経費にできない期間が生じるリスクが高まります。

決定には株主総会の決議と議事録が必要

役員報酬は社長が一人で自由に決めてよいものではなく、株主総会の決議(合同会社は社員の同意等)で決定します。
ひとり会社でも決議は必要で、議事録を作成・保存しておかないと、税務調査で報酬の決定根拠を示せなくなります。

「決議→議事録作成→支給開始」までをセットで、設立から3か月以内に済ませるのが基本の流れです。
議事録のひな形や決議の方法は、顧問税理士に相談すれば用意してもらえます。

支給開始のタイミングの実務

支給開始は「決議した月または翌月から、毎月決まった支給日に定額」という形が一般的です。

設立月の途中から日割りで支給する運用は定期同額の考え方になじまないため、実務では月単位で開始するのが通例です。
迷ったら開始月の扱いを税理士に確認してください。

役員報酬の決め方|金額設定で考慮すべき4つの要素

「いくらにすべきか」に唯一の正解はありませんが、考慮すべき要素は決まっています。
次の4つのバランスで決めるのが基本です。

① 1年間の利益予測から逆算する

役員報酬は年度の途中で増やせないため、まず1年間の売上・経費を予測し、報酬として払える原資を見積もります。
初年度は保守的に見積もり、利益が上振れたら翌期の定時改定で増額するのが安全な進め方です。

個人事業からの法人成りであれば、直前1〜2年の実績が予測のベースになります。
まったくの新規事業の場合は、創業計画書の数字と整合させておくと、融資審査の面でも一貫性が出ます。

② 法人税と所得税・住民税のバランス

報酬を多くすれば法人の利益(法人税の対象)は減りますが、個人の所得税・住民税は累進課税で増えます。

逆に報酬を抑えれば個人の税負担は減りますが、法人に利益が残って法人税がかかります。
この綱引きの最適点を探すのが役員報酬設計の中心です。

③ 社会保険料の負担(会社負担分も忘れずに)

役員報酬を支払うと健康保険・厚生年金に加入し、保険料は会社と本人で労使折半です。
本人負担だけでなく会社負担分も発生するため、「報酬額+会社負担の社会保険料」が実質的な人件費になります(2026年現在)。

報酬額で標準報酬月額が決まり、保険料はそれに連動します。
手取りベースの正確な比較は、税理士にシミュレーションを依頼するのが確実です。

④ 生活費と会社に残す資金のバランス・相場の考え方

報酬は生活費を賄える水準であることも必要です。
一方で、創業融資や取引の審査では会社に資金が残っていることも重視されるため、「取りすぎない」視点も大切です。

「いくらが相場か」は業種・利益水準・地域で大きく異なるため、一概にはいえません。
利益予測・税と社会保険・生活費の3点から、自社に合う水準を組み立ててください。

定期同額給与のルール|期中の変更は原則できない

役員報酬で最も重要な税務ルールが、この定期同額給与です。
仕組みを正しく理解しておきましょう。

損金になる役員給与の3類型

法人税法上、損金にできる役員給与は主に3つの類型に限られます(2026年現在)。

  • ・定期同額給与:毎月同時期に同額を支給する役員報酬
  • ・事前確定届出給与:あらかじめ税務署に届け出た日・額で支給する賞与等
  • ・業績連動給与:主に上場企業等が対象で、中小のひとり会社では通常使わない

 

中小企業の実務は「毎月の報酬は定期同額給与、賞与は事前確定届出給与」の2本立てが基本です。

変更できるのは事業年度開始から3か月以内の定時改定

定期同額給与の増減額は、原則として事業年度開始から3か月以内に行う「定時改定」に限られます。
期中に自由に増減させた分は損金(経費)にならず、法人税の負担がかえって増えてしまいます。

「利益が出そうだから期末に報酬を増やす」という調整は、税務上は通用しません。
役員報酬は「年に一度、期首に決める」ものと覚えてください。

臨時改定・業績悪化などの例外

期中の改定が認められるのは、役職の変更などの臨時改定事由や、経営状況が著しく悪化した場合の業績悪化改定事由に限られます(2026年現在)。

「資金繰りが少し苦しい」程度では業績悪化改定と認められない場合があるため、減額を検討する際は事前に税理士へ相談してください。

役員報酬を変更したときの社会保険(随時改定)

定時改定などで報酬額が大幅に変わると、社会保険の標準報酬月額の随時改定(月額変更届の提出)の対象になり得ます。
税務上の改定と社会保険の手続きはセットで発生する、と覚えておきましょう。

役員賞与を出すなら「事前確定届出給与」の届出を

役員への賞与(ボーナス)は、何もしなければ損金になりません。
損金にするには「事前確定届出給与」の届出が必要です。

届出期限:新設法人は設立から2か月以内

届出期限は原則として「株主総会等の決議日から1か月を経過する日」と「会計期間開始日から4か月を経過する日」のいずれか早い日です。
新設法人の場合は、設立の日以後2か月を経過する日までに届け出る必要があります(2026年現在)。

役員報酬の決定(3か月以内)より届出期限が先に来る点に注意してください。
設立初年度から賞与を出す可能性があるなら、設立直後に賞与の要否まで決めておくのが安全です。

届出どおりに支給しないと損金にならない

事前確定届出給与は、届け出た支給日・支給額のとおりに支給しなければ、原則として全額が損金不算入になります。

「業績がよいので届出より多く払う」「資金繰りが苦しいので減らす」のどちらもNGです。
確実に支給できる金額で届け出ることが重要です。

役員報酬ゼロ・払えない場合はどうなる?

「設立当初は売上が読めないので、報酬ゼロにしたい」という相談は非常に多くあります。
ゼロ報酬の扱いを正確に押さえましょう。

役員報酬ゼロは違法ではない

役員報酬をゼロにすること自体は適法で、届出などの特別な手続きも不要です(2026年現在)。

副業で設立した会社で本業の勤務先に知られたくない場合や、設立当初に利益を会社へ残したい場合など、あえてゼロにする使いどころもあります。

報酬ゼロだと社会保険に加入できないのが原則

ここで最も注意すべきなのが社会保険です。
役員報酬がゼロの役員は、原則として社会保険(健康保険・厚生年金)に加入できません(保険料の徴収ができず、被保険者の資格が認められないため・2026年現在)。

この場合、国民健康保険・国民年金に加入し続けることになります。

「法人化して厚生年金に入りたい」方は、社会保険に加入できる水準の報酬を設定する必要があります。
逆に会社員の副業法人では、ゼロ報酬にすることで勤務先の社会保険のみを継続する形が一般的です。

業績悪化で払えなくなった場合の減額

期中に報酬を払えなくなった場合、経営状況の著しい悪化があれば業績悪化改定事由として減額が認められる場合があります。

ただし要件の判断は厳格で、安易な減額は損金不算入のリスクを伴います。
資金繰りが悪化しはじめた段階で、早めに税理士へ相談してください。

役員報酬の節税効果と注意点

給与所得控除による節税の仕組み

役員報酬は法人側で損金になり、受け取る個人側では給与所得控除が差し引かれます。

この「二重の圧縮」が法人化の節税の核心で、個人事業主のまま利益に課税されるより有利になる場合があります(詳しくは会社設立の節税解説記事をご覧ください)。

取りすぎ・抑えすぎのデメリット

報酬を取りすぎると、個人の所得税・住民税と社会保険料が増え、会社の資金も細ります。
逆に抑えすぎると、法人税の負担が増えるうえ、生活費が不足したり、将来の厚生年金額や融資審査での評価に影響したりします。

「法人と個人のトータルの手取りが最大になる水準」を探すのが役員報酬設計のゴールです。
設立時と定時改定のたびに、税理士とシミュレーションしながら調整していくことをおすすめします。

まとめ:役員報酬は「設立3か月以内」に、1年分を見据えて決める

会社設立後の役員報酬は、設立から3か月以内に株主総会決議で決定し、定期同額給与として支給を開始するのが基本です。

期中の変更は原則できないため、1年間の利益予測・税金・社会保険料・生活費のバランスから逆算して決めましょう。

賞与を出すなら事前確定届出給与の届出(新設法人は設立から2か月以内)、報酬ゼロなら社会保険に加入できない点など、期限と例外の把握が成否を分けます。

初年度の報酬設計は会社の資金繰りを左右しますので、設立前後の早い段階で税理士にご相談ください。

役員報酬の設計・シミュレーションのご相談は、ヤマザキ税理士事務所へ

春日部市、越谷市、さいたま市を中心に、会社設立・創業融資・節税対策をサポートする税理士事務所。法人と個人の手取りを踏まえた報酬シミュレーションもご相談いただけます。初回相談無料です。

よくある質問(FAQ)

Q. 会社設立後、役員報酬はいつまでに決めればよいですか?

定期同額給与として損金算入するため、設立から3か月以内に決定し支給を開始するのが実務原則です(2026年現在)。
株主総会の決議と議事録の作成もセットで行ってください。

Q. 会社設立初年度の役員報酬はいつから支給できますか?

設立から3か月以内に決議し、決議した月または翌月から毎月定額で支給を開始するのが一般的です。
開始月の扱いに迷う場合は税理士に確認してください。

Q. 会社を設立したら役員報酬はいくらにすればよいですか?

唯一の正解はなく、1年間の利益予測・法人税と所得税のバランス・社会保険料・生活費の4要素から逆算して決めます。
初年度は保守的に設定し、翌期の定時改定で調整するのが安全です。

Q. 役員報酬を0円にすることはできますか?違法ではないですか?

ゼロにすることは適法で、特別な届出も不要です(2026年現在)。
合同会社でも同様に、報酬を支給しない選択ができます。

Q. 役員報酬が0円の場合、社会保険はどうなりますか?

報酬ゼロの役員は、原則として健康保険・厚生年金の被保険者になれません(2026年現在)。
その場合は国民健康保険・国民年金に加入することになります。

Q. 役員報酬を期の途中で変更できますか?

原則できません。
増減できるのは事業年度開始から3か月以内の定時改定に限られます。
例外は役職変更などの臨時改定事由と、経営の著しい悪化による業績悪化改定事由のみです。

Q. 会社が役員報酬を払えない場合はどうすればよいですか?

経営状況の著しい悪化があれば、業績悪化改定事由として減額が認められる場合があります。
要件の判断は厳格なため、自己判断で減額せず、早めに税理士へ相談してください。

Q. 役員賞与(ボーナス)は経費になりますか?

事前確定届出給与として税務署に届け出て、届出どおりの日・額で支給すれば損金になります。
新設法人の届出期限は設立の日以後2か月を経過する日までです(2026年現在)。

Q. 役員報酬20万円の場合、会社の社会保険料負担はどれくらいですか?

健康保険・厚生年金の保険料は労使折半で、会社負担分は報酬のおおむね15%程度、月3万円程度が目安です(2026年現在の目安)。
料率は地域や年度で変わるため、正確な額は加入時に確認してください。

Q. 役員報酬に源泉徴収は必要ですか?

必要です。
役員報酬は給与所得として、支給のつど所得税の源泉徴収を行い、会社が納付します(2026年現在)。
納付手続きや住民税の特別徴収もあわせて、設立時に体制を整えておきましょう。

監修者

税理士 山﨑 健司(ヤマザキ税理士事務所)
春日部市、越谷市、さいたま市を中心に、会社設立・創業融資・節税対策をサポートする税理士事務所。中小企業・個人事業主の起業支援に豊富な経験を持つ。


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