会社設立で相続税対策はできる?資産管理会社の活用と注意点を税理士が解説

会社設立による相続税対策と資産管理会社の活用

「資産管理会社を作ると相続税対策になると聞いたけれど、本当に効果があるのだろうか」

不動産や金融資産をお持ちの方から、近年とても多くいただくご相談です。
結論からいえば、資産管理会社による相続税対策は、効果が出る場合と出ない場合があり、資産の規模・構成と準備期間で決まります。
「会社を作れば必ず相続税が減る」という単純な話ではないため、仕組みと注意点の両方を知ることが大切です。

この記事では、資産管理会社が相続税対策になるといわれる仕組み、見落とされがちなデメリット、いくらから検討すべきかの考え方、作り方までを税理士が解説します。

※相続税評価は個別性が非常に高い分野のため、本記事は一般論として参考にし、具体的な判断は必ず税理士にご相談ください。

📌 この記事のポイント

  • ・資産管理会社の相続対策は「財産が株式に変わる」「所得分散」「生前贈与しやすい」の3つの仕組み
  • ・会社が3年以内に取得した土地・建物は時価評価となり、設立直後は効果が出にくい
  • ・行き過ぎた節税は否認事例があり、リスクを伴う
  • ・資産移転時のコスト・維持コスト・個人の特例が使えなくなる場合などデメリットも多い
  • ・効果は資産規模・構成・期間しだい。実行前に税理士のシミュレーションが必須

会社設立で相続税対策はできる?結論と向いている人

効果が出る場合と出ない場合がある

資産管理会社による相続税対策は、条件がそろえば有効に働く場合がある一方、資産規模が小さい方や準備期間が取れない方には、コスト倒れになる場合もあります。

効果を左右するのは、主に「資産の規模」「資産の構成(不動産か金融資産か)」「相続までに確保できる期間」の3つです。

おおまかにいえば、相続税の負担が大きくなる見込みがあり、毎年の不動産収入や運用益が積み上がっていく方ほど、検討する価値があるといわれています。
逆に、相続税がほとんどかからない見込みの方には、維持コストのほうが重くなる場合が多いでしょう。

資産管理会社とは

資産管理会社とは、不動産や株式などの個人資産を管理・運用することを目的に設立する会社のことです。

事業を外部に展開する一般的な会社と異なり、オーナー一族の資産を持つ「器」としての役割が中心で、プライベートカンパニーとも呼ばれます。

資産管理会社が相続税対策になる3つの仕組み

なぜ会社を設立すると相続税対策になるといわれるのか。
仕組みは大きく3つに整理できます。

仕組み① 相続財産が「株式」に変わる

個人が不動産や現金を持ったまま亡くなると、それら自体が相続財産になります。
一方、資産を資産管理会社に移しておくと、相続財産が不動産や現金そのものから「会社の株式(出資持分)」に変わることが、資産管理会社による相続対策の出発点です。

非上場株式の相続税評価は、類似業種比準方式や純資産価額方式などにより行われ、資産構成や会社規模によって評価方法が変わります。

評価には専門的な計算が必要で、資産の持ち方によって結果が大きく変わるため、「株式に変えれば必ず評価が下がる」わけではありません。
必ず税理士による試算を前提にしてください。

仕組み② 所得分散で相続財産の増加スピードを抑えられる

家賃収入や運用益を個人で受け取り続けると、その分だけ本人の財産が毎年積み上がり、将来の相続財産が膨らんでいきます。
収入を会社に帰属させ、家族へ役員報酬として分散すれば、本人の相続財産の増加を抑えられる場合があります。

ただし、家族への役員報酬は実際に業務に関わっている勤務実態が前提です。
実態のない報酬は税務調査で否認されるリスクがあるため、職務内容に見合った設計が欠かせません。

仕組み③ 株式なら少しずつ生前贈与しやすい

不動産そのものを少しずつ贈与するのは、登記や分割の面で手間がかかります。
資産を株式の形にしておけば、暦年贈与の基礎控除(年110万円・2026年現在)の枠内で、後継者へ計画的に移転しやすくなるといわれています。

なお、相続開始前の贈与を相続財産に加算する期間は、近年の改正で段階的に7年へ延長されています(2026年現在)。
生前贈与は「早く始めるほど選択肢が広がる」対策である点を押さえておきましょう。

資産管理会社を相続対策に使うデメリット・注意点

検索でも「資産管理会社 デメリット」が急増しているように、この対策には見落とせない注意点が多くあります。
ここを理解せずに設立すると後悔しかねません。
まず全体像を早見表で確認してください。

資産管理会社のデメリット・注意点と対応の方向性

デメリット・注意点 対応の方向性
3年以内取得の土地・建物は時価評価 早期に着手し、時間をかけて取り組む
行き過ぎた節税の否認リスク 節税目的だけのスキームを避け、事前に税理士へ相談
資産移転時のコスト
(譲渡所得税・流通税等)
移す資産を選別し、コストと効果を試算
個人の特例(小規模宅地等)が使えなくなる場合 個人所有のまま特例を使う案と比較検討
維持コスト・株式分散のトラブル 毎年の固定費を見込み、承継設計をセットで行う

 

それぞれの内容を順に解説します。

設立直後は効果が出ない:3年以内に取得した不動産は時価で評価される

最も重要な注意点がこれです。
純資産価額の計算では、会社が課税時期前3年以内に取得した土地・建物は、路線価や固定資産税評価額ではなく通常の取引価額(時価)で評価されるため、設立直後の相続では評価引き下げ効果が期待できません(2026年現在)。

つまり、資産管理会社による相続対策は「相続の直前に駆け込みで行う」ことができない仕組みになっています。
健康なうちから、時間をかけて取り組む必要がある対策だと理解してください。

行き過ぎた節税は否認されるリスク

相続税評価には、著しく不適当な評価となる場合に国税当局が別の評価を行える規定(財産評価基本通達6項)があります。
いわゆる「タワマン節税」に対する否認が裁判で認められた事例も存在し、節税効果だけを狙った行き過ぎたスキームは大きなリスクを伴います。

「相続直前の多額の借入による不動産取得」のような形は、特に慎重な検討が必要です。
実行前に、必ず相続に詳しい税理士の意見を聞いてください。

資産移転にコストがかかる

個人の不動産を会社へ売買や現物出資で移す際には、個人側に譲渡所得税、会社側に不動産取得税や登録免許税などがかかる場合があります。

移転コストが節税効果を上回れば本末転倒ですので、移す資産の選別とコストの試算が欠かせません。

小規模宅地等の特例など個人の特例が使えなくなる場合がある

個人で不動産を持っている場合に使える小規模宅地等の特例などは、法人所有に切り替えると使えなくなる場合があります。

「個人のまま特例を使う」ほうが有利なケースもあるため、法人化ありきで考えないことが重要です。

維持コスト・株式分散のリスク

法人には、赤字でも法人住民税の均等割(年7万円程度)や税理士費用などの維持コストが毎年かかります(2026年現在)。

また、株式を複数の相続人に分けると、会社の意思決定をめぐって相続人間のトラブルになるリスクもあります。
誰に株式を集めるかという承継設計もセットで考えましょう。

資産管理会社はいくらから検討すべき?

目安の考え方(金額の絶対的な基準はない)

「資産がいくらあれば作るべき」という絶対的な基準はありません。
一般的には、相続税の基礎控除を大きく超える資産があり、相続税の負担が重くなる見込みの方や、毎年の不動産収入・運用収入が継続的に積み上がる方が検討の候補といわれています。

維持コストや移転コストを上回る効果が見込めるかどうかが判断の軸です。
ご自身の資産構成での損益分岐は、税理士による個別シミュレーションで確認してください。

実務では、収益物件を複数持つ地主の方や、配当・運用益が大きい投資家の方が典型的な検討層です。
逆に、自宅と預金が資産の中心という方には向かない場合が多いといえます。

長期戦の対策である

3年以内取得の時価評価ルールや、生前贈与の加算期間の延長からも分かるとおり、資産管理会社による相続対策は数年〜10年以上かけて効果を育てる長期戦です。
「まだ早い」と感じるタイミングこそ、検討を始める適期といえます。

資産管理会社の作り方と資産の移し方

設立の流れと会社形態

設立の手続き自体は通常の会社設立と同じで、基本事項の決定→定款作成→登記申請→税務署等への届出という流れです。

資産管理会社では、設立費用が安く(約7万〜10万円・2026年現在)、機関設計が柔軟な合同会社が選ばれることも多くあります。
外部の信用が必要な場合は株式会社が候補になります。

資産の移し方3パターン

個人資産を会社に持たせる方法は、主に次の3つです。

  • ・売買:個人から会社へ売却する。個人側に譲渡所得税がかかる場合がある
  • ・現物出資:資産を出資として会社へ移す。評価や手続きが複雑になりやすい
  • ・会社で新規取得:会社の資金や借入で新たに購入する。移転コストは避けられるが、3年以内は時価評価

 

どの方法でも税負担や手続きコストが発生し得るため、資産ごとに最適な移し方を設計する必要があります。
このステップこそ、相続と法人税の両方に通じた税理士の腕の見せどころです。

サラリーマン・マイクロ法人との関係

資産運用の規模が大きい会社員が、マイクロ法人型の資産管理会社を持つケースも増えています。

会社員の場合は就業規則や社会保険の論点が加わるため、会社員の会社設立を解説した記事もあわせてご覧ください。

まとめ:効果は「規模×構成×期間」しだい。早めの相談が最大の対策

会社設立による相続税対策は、財産を株式に変える・所得を分散する・生前贈与しやすくするという3つの仕組みで成り立ち、条件がそろえば有効に働く場合があります。

一方で、3年以内取得の時価評価、否認リスク、移転・維持コスト、個人特例の喪失など、注意点も同じだけ存在します。

効果が出るかどうかは、資産の規模・構成・準備期間によって一人ひとり異なります。
相続が視野に入る前の早い段階で、税理士に資産全体の棚卸しとシミュレーションを依頼することが、最も確実な第一歩です。

会社設立・資産管理会社・相続対策のご相談は、ヤマザキ税理士事務所へ

春日部市、越谷市、さいたま市を中心に、会社設立・創業融資・節税対策をサポートする税理士事務所。資産構成に合わせた相続シミュレーションもご相談いただけます。初回相談無料です。

よくある質問(FAQ)

Q. 資産管理会社を持つと相続税対策になりますか?

なる場合とならない場合があります。
財産が株式に変わる・所得を分散できる・生前贈与しやすくなるという仕組みが働けば有効な場合がありますが、効果は資産の規模・構成・期間しだいです。
税理士の試算を前提にしてください。

Q. 資産管理会社を相続対策に使うデメリットは何ですか?

3年以内取得の不動産が時価評価になる、資産移転にコストがかかる、個人の特例が使えなくなる場合がある、維持コストが毎年かかる、株式分散による相続人間のトラブルなどが代表例です。
メリットと必ずセットで検討してください。

Q. 資産管理会社は資産がいくらからつくるべきですか?

絶対的な基準はありません。
相続税の基礎控除を大きく超える資産がある方や、毎年の不動産・運用収入が積み上がる方が検討の候補といわれています。
維持コストとの比較を税理士に試算してもらいましょう。

Q. 資産管理会社の株式は相続のときどうなりますか?

株式(出資持分)が相続財産として相続人に引き継がれます。
非上場株式の評価は類似業種比準方式や純資産価額方式などの専門的な計算によるため、評価と分け方は税理士にご相談ください。

Q. 設立してすぐに相続が発生したらどうなりますか?

会社が課税時期前3年以内に取得した土地・建物は時価で評価されるため、評価引き下げの効果は期待できません(2026年現在)。
資産管理会社は時間をかけて効果を育てる長期の対策です。

Q. 個人の不動産を資産管理会社に移すとき、税金はかかりますか?

売買や現物出資による移転では、個人側に譲渡所得税、会社側に不動産取得税・登録免許税などがかかる場合があります。
移転コストと効果の比較が不可欠ですので、事前に税理士へ試算を依頼してください。

Q. 資産管理会社は株式会社と合同会社どちらがよいですか?

外部との取引や信用が重要でなければ、設立費用が安く運営が柔軟な合同会社が選ばれることが多くあります。
将来の承継や資金調達の計画によっては株式会社が向く場合もあり、目的しだいです。

Q. サラリーマンでも資産管理会社をつくれますか?

法律上は可能で、資産運用規模の大きい会社員がマイクロ法人型で設立する例もあります。
ただし就業規則の確認や社会保険の扱いなど会社員特有の注意点があるため、会社員向けの解説記事をご覧ください。

Q. 資産管理会社で相続税以外に節税できる税金はありますか?

所得税・住民税について、法人税率との差や家族への所得分散で負担を抑えられる場合があります。
仕組みの詳細は会社設立の節税を解説した記事をご覧ください。

Q. タワーマンション節税は今もできますか?

かつて有効とされた手法には、評価ルールの見直しや否認事例(財産評価基本通達6項による否認が認められた判決)があり、現在は大きなリスクを伴います。
個別の物件・状況によって判断が分かれるため、必ず税理士に相談してください。

監修者

税理士 山﨑 健司(ヤマザキ税理士事務所)
春日部市、越谷市、さいたま市を中心に、会社設立・創業融資・節税対策をサポートする税理士事務所。中小企業・個人事業主の起業支援に豊富な経験を持つ。


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