会社設立は自分でできる?専門家に依頼すべき理由と税理士・司法書士の費用対効果を比較|税理士が解説

「会社設立は自分でやれば安く済むと聞くけれど、本当に自分でできるのだろうか」
創業期は1円でも節約したいだけに、専門家への依頼費用は悩ましいところです。
結論からいえば、会社設立の手続きは自分でできますが、費用の節約額と「設計ミスで将来失う金額」を比べて判断することが重要です。
数万円の節約のために、何十万円もの税負担を背負ってしまうケースが実際にあるからです。
この記事では、自分で設立する場合の費用と流れ、司法書士・行政書士・税理士の正確な役割分担、そして「安く済ませたつもりが高くつく」5つの失敗例を税理士が解説します。
金額・制度は2026年現在のものです。
📌 この記事のポイント
- ・会社設立は法律上、自分ですべて手続きできる(依頼義務はない)
- ・自分でやる場合の費用は法定費用のみ(株式会社約20万〜25万円)
- ・登記申請の代理ができるのは司法書士だけ。行政書士は定款・許認可、税理士は税務と設計
- ・最大のリスクは手続きミスではなく「設計ミス」(資本金・決算月・役員報酬)
- ・手続きは自分で+設計は専門家、の組み合わせが費用対効果の最適解になりやすい
会社設立は自分でできる?結論と向き不向き
法律上は自分で全部できる
会社設立の手続きに、専門家への依頼義務はありません(2026年現在)。
定款の作成・認証、資本金の払込み、法務局への登記申請、設立後の届出まで、すべて自分で行えます。
自分でやるのに向いている人・向いていない人
向いているのは、時間に余裕があり、書類仕事が苦にならず、事業がシンプル(許認可不要・ひとり会社)な方です。
逆に、開業準備で忙しい方、許認可業種の方、消費税や融資など設計の論点が多い方は、専門家を頼るほうが結果的に安くつくことが多いといえます。
自分でやる場合の費用と流れ
かかるのは法定費用のみ
自分でやる場合にかかるのは法定費用のみで、株式会社なら約20万〜25万円が目安です(2026年現在)。
電子定款と引き下げ後の認証手数料を組み合わせれば、合計20万円を下回る場合もあります。合同会社なら約6万〜10万円(電子定款なら約6万円)です。
この法定費用は、専門家に依頼しても同じくかかります。
つまり「自分でやる」ことで節約できるのは、専門家報酬の部分だけです。ここが費用対効果を考える出発点になります。
設立サービスを使えば書類作成の負担は大きく減る
近年は、freee会社設立やマネーフォワード会社設立などの会社設立支援サービスが普及しています。
画面の案内に沿って入力すると設立書類が作成でき、電子定款にも対応しているため、自分でやる場合の有力な選択肢です(料金・サービス内容は各サービスの公式サイトで確認してください)。
ただし、サービスが支援するのは書類作成までで、申請自体は本人が行う位置づけです。
また、入力する資本金や決算月が正しい設計かどうかは、サービスは判断してくれません。
電子定款で印紙代4万円を節約
紙の定款には収入印紙4万円が必要ですが、電子定款なら不要です。
自作にはマイナンバーカード等による電子署名の環境が必要なため、設立サービスや専門家を経由して電子定款にするのが実際的です(2026年現在)。
ちなみに、設立日は登記を申請した日になるため、法務局の開庁日(土日祝日・年末年始を除く)の中から好きな日を設立日に選べます。オンライン申請でも受付は翌開庁日の扱いになるため、1月1日のような日は設立日にできません。
縁起の良い日を選ぶ方も多いですが、月初を避けるなど税金面から見た日取りの考え方もあるため、こだわりがなければ税理士に相談してみてください。
自分でやるメリット・デメリット
メリット:費用の節約と手続きの理解
最大のメリットは専門家報酬の節約です。
また、定款や登記を自分で作ることで、会社の仕組みへの理解が深まるという副産物もあります。
デメリット:時間・補正リスク・そして設計ミス
デメリットは3つあります。
①書類作成や公証役場・法務局とのやりとりに時間と手間がかかること、②書類の不備による補正や却下のリスクがあること、そして③最大のリスクが「設計ミス」です。
手続きのミスは補正すれば直せますが、資本金・決算月・役員報酬などの設計ミスは、後から気づいても取り返しがつかないことがあります。
具体的な失敗例は後半で詳しく紹介します。
専門家は誰に何を頼める?司法書士・行政書士・税理士の違い
「専門家に頼む」と一口にいっても、士業ごとにできることが法律で定められています。
正確な役割分担は次のとおりです(2026年現在)。
司法書士・行政書士・税理士の役割分担
| 専門家 | 頼めること | 注意点 |
|---|---|---|
| 司法書士 | 設立登記の申請代理(唯一できる専門家)・定款作成の支援 | 税務の設計・届出は専門外 |
| 行政書士 | 定款の作成・認証サポート、許認可申請 | 登記申請の代理はできない |
| 税理士 | 税務署・県・市への届出、資本金・決算月・役員報酬など税務に影響する設計、設立後の税務顧問 | 登記申請の代理はできない(提携司法書士と連携) |
*スライドすることで表の全てが読めます。
※社会保険・労働保険の届出は社会保険労務士(社労士)の業務です。
司法書士に頼む場合
登記までワンストップで任せたいなら司法書士です。
報酬は数万円〜10万円程度といわれますが、事務所や依頼範囲により異なります。
行政書士に頼む場合
行政書士の守備範囲は定款まわりと許認可です。
建設業・飲食業など許認可が必要な業種では、設立と許認可申請をまとめて相談できる強みがあります。ただし登記申請の代理はできないため、登記は本人申請か司法書士への依頼になります。
税理士に頼む場合
税理士の出番は、税務に影響する「設計」と設立後の税務です。
資本金・決算月・役員報酬の設計、税務署等への届出、そして設立後の記帳・決算・節税までを一貫して支援します。
実務では、会社設立登記は司法書士が担当し、設立前後の税務・資金面は税理士が担当する形が一般的です。
顧問契約とセットにすることで、設立支援の報酬を抑える事務所もあるため、設立後の顧問まで見据えて相談すると費用対効果が高くなります。
「自分で安く」が高くつく5つの失敗例
ここからが本記事の核心です。
資本金・決算月・役員報酬の設計ミスは、専門家報酬の何倍もの税負担になって返ってくることがあります。実際によくある5つの失敗を紹介します。
失敗① 資本金1,000万円の壁を知らなかった
見栄えを重視して資本金を1,000万円にした結果、設立当初の消費税の免税が受けられなくなるケースです(事業年度開始日の資本金1,000万円未満が免税のライン・2026年現在)。
資本金の決め方は、資本金を解説した記事をご覧ください。
失敗② 決算月の設計ミスで免税期間が短くなった
よく考えずに決算月を決めてしまい、1期目が数か月で終わって消費税の免税期間を無駄にするケースです。
決算月ひとつで免税期間の長さが変わります。詳しくは消費税免除を解説した記事をご覧ください。
失敗③ 青色申告の承認申請が期限切れ
青色申告の承認申請書の期限(設立から3か月と第1期末の早い日の前日まで)を知らずに過ぎてしまい、赤字の10年繰越などの特典を初年度から使えなくなるケースです。
届出の期限一覧は、設立後の届出を解説した記事をご覧ください。
失敗④ 役員報酬と社会保険の設計ミス
役員報酬は設立から3か月以内に決め、定期同額給与として原則その事業年度中は変更できず(業績悪化などの臨時改定事由に当たる場合を除く)、金額しだいで税金と社会保険料(会社負担は報酬の15%程度が目安)が大きく変わります。
何となく決めた報酬額で手取りが大きく目減りするのは、典型的な失敗です。役員報酬と社会保険の記事をあわせてご覧ください。
失敗⑤ 許認可要件の見落とし
定款の事業目的や資本金が許認可の要件を満たしておらず、営業開始前に定款変更や増資が必要になるケースです。
許認可業種の方は、設立前に要件を必ず確認してください。
これらの失敗に共通するのは、「手続きは正しくできたのに、設計が間違っていた」という点です。
そして設計ミスの多くは、設立前の相談で防げます。
結局どう選ぶ?費用対効果の考え方
手続きは自分で+設計は専門家、が最適解になりやすい
費用対効果で考えると、答えはシンプルです。
書類作成・申請という「手続き」は、自分+設立サービスでも十分対応できます。一方、資本金・決算月・役員報酬という「設計」は、ミスの代償が大きいため専門家に相談するのが安全です。
フル依頼か完全セルフかの二択ではなく、「手続きはセルフ、設計は税理士」という組み合わせが、節約と安全を両立します。
設立前の無料相談を活用する
設立前の相談を無料で受け付けている税理士事務所も多くあります。
相談だけなら費用はかからないため、「自分でやるか迷っている段階」でこそ、一度話を聞いてみることをおすすめします。
まとめ:節約すべきは手続き費用。設計はケチらない
会社設立は自分ででき、費用は法定費用のみ(株式会社約20万〜25万円・2026年現在)で済みます。
設立サービスを使えば書類作成の負担も大きく減ります。
ただし、資本金・決算月・役員報酬・青色申告・許認可という「設計」のミスは、専門家報酬の何倍もの代償になり得ます。
手続きの節約と設計の安全を両立させたい方は、設立前にぜひ税理士へご相談ください。
会社設立の設計・設立後の税務のご相談は、ヤマザキ税理士事務所へ
春日部市、越谷市、さいたま市を中心に、会社設立・創業融資・節税対策をサポートする税理士事務所。資本金・決算月・役員報酬の設計もご相談いただけます。会社設立登記は司法書士が担当します。初回相談無料です。
よくある質問(FAQ)
Q. 会社設立は自分でできますか?
できます。法律上、専門家への依頼義務はなく、定款作成から登記申請、設立後の届出まで自分で行えます(2026年現在)。
ただし資本金や決算月などの「設計」は、ミスの代償が大きい点に注意してください。
Q. 自分で会社設立すると費用はいくらかかりますか?
法定費用のみで、株式会社約20万〜25万円、合同会社約6万〜10万円が目安です(2026年現在)。
電子定款と引き下げ後の認証手数料を組み合わせれば、株式会社でも20万円を下回る場合があります。
Q. 会社設立の登記は自分でできますか?
できます。登記申請書の様式・記載例は法務局のWebサイトで入手できます。
ただし書類の不備があると補正や却下のリスクがあり、設立完了が遅れる点は覚悟してください。
Q. 会社設立を自分でやるデメリットは何ですか?
時間と手間がかかること、書類不備による補正リスク、そして最大のデメリットは資本金・決算月・役員報酬などの設計ミスです。
設計ミスは専門家報酬の何倍もの税負担につながることがあります。
Q. 司法書士と行政書士はどちらに頼むべきですか?
登記申請の代理まで任せたいなら司法書士です(登記申請の代理は司法書士が行う業務)。
行政書士は定款の作成サポートと許認可申請が守備範囲のため、許認可業種の方に向いています。
Q. 会社設立について税理士に相談すると何をしてくれますか?
資本金・決算月・役員報酬など税務に影響する設計、税務署等への届出、設立後の記帳・決算・節税までを支援します。
登記は司法書士が担当し、税理士と連携して進める形が一般的です。
Q. 専門家に頼むと費用はどれくらいですか?
設立支援の報酬は数万円〜10万円程度といわれますが、事務所や依頼範囲により異なります。
税理士は顧問契約とセットで設立支援の報酬を抑える事務所もあるため、見積もりで確認してください。
Q. freeeやマネーフォワードの会社設立サービスは無料ですか?
書類作成を無料〜低額で支援するサービスとして知られていますが、料金体系や条件はサービスにより異なります。
最新の内容は各サービスの公式サイトで確認してください。申請自体は本人が行う位置づけです。
Q. 会社設立日は自分で決められますか?
法務局の開庁日の中から決められます。設立日は登記を申請した日になるため、希望日に申請すればその日が設立日です。ただし土日祝日・年末年始は登記を受け付けないため、これらの日は設立日にできません(2026年現在)。
希望日から逆算して書類を準備しましょう。
Q. 自分で設立した後から税理士に依頼できますか?
できます。ただし資本金や決算月など設立時にしか設計できない項目もあるため、相談は早いほど効果的です。
設立後でも、届出の期限内であればリカバリーできることも多いので、早めにご相談ください。
監修者
税理士 山﨑 健司(ヤマザキ税理士事務所)
春日部市、越谷市、さいたま市を中心に、会社設立・創業融資・節税対策をサポートする税理士事務所。中小企業・個人事業主の起業支援に豊富な経験を持つ。




