会社設立後の社会保険・労働保険の加入手続き|設立5日以内に必要な届出とは|税理士が解説

「会社を設立したら社会保険の手続きは5日以内と聞いたけれど、何をどこに出せばいいのだろう」
設立直後のひとり社長から、最も多く寄せられる不安のひとつです。中には「もう5日を過ぎてしまったかもしれない」と焦っている方もいるでしょう。
結論からいえば、法人は役員1人でも社会保険への加入が義務で、新規適用届は設立から5日以内に年金事務所へ提出します。
そして期限を過ぎてしまった場合も、正しい対処法があります。
この記事では、会社設立後の社会保険(健康保険・厚生年金)の加入手続きと必要書類、5日を過ぎた場合の対処法、保険料の目安、従業員を雇った場合の労働保険までを税理士が解説します。
期限・制度は2026年現在のものです。
📌 この記事のポイント
- ・法人は従業員の有無にかかわらず社会保険の強制適用事業所(役員1人でも加入義務)
- ・新規適用届・被保険者資格取得届は設立から5日以内に年金事務所へ
- ・5日を過ぎても届出は受理される。気づいたら即提出が最善
- ・保険料は労使折半で、会社負担は報酬のおおむね15%程度が目安
- ・労働保険(労災・雇用保険)は従業員を雇った場合のみ。役員は原則対象外
会社設立後の社会保険加入は義務?1人会社でも強制適用
まず、「うちのような小さい会社も入るのか」という疑問に答えます。
答えは「入ります」。法人は規模にかかわらず強制適用です。
法人は役員1人でも健康保険・厚生年金に加入する
法人は、従業員の有無にかかわらず社会保険(健康保険・厚生年金)の強制適用事業所です(2026年現在)。
役員報酬を支払う役員1人だけの会社、いわゆるひとり社長の会社でも加入義務があります。
例外は、役員報酬がゼロの場合です。
報酬ゼロの役員は保険料の徴収ができず、被保険者になれないのが原則のため、この場合は国民健康保険・国民年金に加入し続けることになります。
個人事業主時代(国保・国民年金)との違い・切り替え
個人事業主から法人成りした方は、国民健康保険・国民年金から健康保険・厚生年金への切り替えになります。
厚生年金は国民年金より将来の年金額が手厚く、健康保険では扶養の仕組みも使えるため、保障面は充実します。
負担の仕組みも変わります。
国民健康保険・国民年金は全額自己負担ですが、健康保険・厚生年金は会社との労使折半になります。
一方で、保険料は会社負担分も含めて増えることが多く、役員報酬の設定しだいで負担額が大きく変わります。
切り替えのタイミングと報酬設計はセットで考えましょう。
社会保険の加入手続き|設立5日以内に出す2つの届出
社会保険の加入手続きは、「会社として加入する届」と「人として加入する届」の2段構えです。
どちらも期限は設立から5日以内です。
新規適用届(会社として加入する届)
新規適用届は、会社が社会保険の適用事業所になったことを届け出る書類です。
設立(適用事業所に該当した日)から5日以内に、管轄の年金事務所へ提出します(2026年現在)。
添付書類は、法人の登記簿謄本(登記事項証明書・コピー不可・発行から90日以内のもの)と、法人番号指定通知書等のコピーの2点です。通知書が手元にない場合は、国税庁の法人番号公表サイトの画面を印刷したもので代えられます。
登記完了後すぐに登記事項証明書を取得できるよう、段取りしておきましょう。
被保険者資格取得届・被扶養者(異動)届(人として加入する届)
会社の届出とあわせて、加入する役員・従業員一人ひとりについて被保険者資格取得届を5日以内に提出します。
配偶者や子どもなど扶養家族がいる場合は、健康保険被扶養者(異動)届もあわせて提出してください(2026年現在)。
手続きが完了すると、資格情報の通知が届きます。
医療機関の受診に関わるため、届いたら内容を確認して大切に保管しましょう。
提出方法と必要書類チェックリスト
提出は、年金事務所の窓口・郵送・電子申請(e-Gov等)のいずれでも可能です(2026年現在)。
📋 社会保険の加入手続きチェックリスト(設立から5日以内)
- ☐ 新規適用届(会社の加入)
- ☐ 法人の登記事項証明書(原本・発行から90日以内)
- ☐ 法人番号指定通知書等のコピー(ない場合は法人番号公表サイトの画面印刷)
- ☐ 被保険者資格取得届(役員・従業員ごと)
- ☐ 健康保険被扶養者(異動)届(扶養家族がいる場合)
期限が5日と短いため、登記の完了予定日から逆算して書類を準備しておくのが成功のコツです。
5日を過ぎてしまったらどうなる?
検索でも「会社設立 社会保険 5日過ぎた」と調べる方が多くいます。
すでに過ぎてしまった方も、落ち着いて対処すれば大丈夫です。
期限後でも受理される。気づいたら即提出
期限を過ぎても届出は受理されるため、気づいた時点ですぐに提出することが最善の対処法です。
速やかに提出すれば、実務上は大きな問題にならないことが多いといえます(2026年現在)。
なお、加入日は届出日ではなく事実発生日(設立日・報酬支払い開始日など)に遡ります。
そのため、保険料も遡って発生する点は理解しておいてください。また、遡って加入した期間について、それまで納めていた国民健康保険料・国民年金保険料の還付や精算の手続きが別途必要になります。
放置のリスク(加入指導・遡及加入)
問題なのは「過ぎたこと」ではなく「放置すること」です。
未加入のまま放置すると、年金事務所からの加入指導や立入検査の対象となり、最大2年程度の遡及加入となる場合があります。
遡及加入になれば、まとまった保険料を一度に納めることになり、資金繰りへの打撃は小さくありません。
「あとで」ではなく「今日」動くのが正解です。
社会保険料はいくら?いつから引き落とされる?
加入手続きと同じくらい気になるのが、保険料の負担です。
労使折半・会社負担はおおむね15%程度
健康保険・厚生年金の保険料は、会社と本人で半分ずつ負担する労使折半です。
保険料は労使折半で、会社負担分は報酬のおおむね15%程度が目安です(2026年現在の目安・料率は地域や年度で変動します)。
ひとり社長の場合、本人負担分と会社負担分の両方が実質的に自分の会社から出ていきます。
「報酬額+その15%程度」が毎月の実質人件費になる、とイメージしてください。
たとえば役員報酬が月20万円なら、会社負担分は月3万円程度が目安です(2026年現在の目安)。
本人負担分も給与から天引きされるため(子ども・子育て拠出金は会社のみの負担のため、本人負担は会社負担よりやや少なくなります)、世帯全体の手取りへの影響は事前に試算しておくと安心です。なお、会社負担の割合は従業員の年齢(40歳以上は介護保険料が加わる)で変わり、2026年4月分からは子ども・子育て支援金の負担も始まっています。
保険料は資格取得月から発生・原則翌月末に納付
保険料は資格取得月(加入月)から発生し、原則として翌月末に口座振替などで納付します(2026年現在)。
「設立してすぐ引き落とされる」わけではなく、1か月遅れで請求が始まる、と覚えておくと資金繰りの見通しが立てやすくなります。
役員報酬の設定が保険料を左右する
保険料のもとになる標準報酬月額は、役員報酬の額をもとに決まります。
つまり、役員報酬をいくらにするかが、税金だけでなく社会保険料の負担も決めるということです。報酬の決め方は役員報酬を解説した記事をご覧ください。
従業員を雇ったら労働保険の手続きも
従業員を雇う場合は、社会保険に加えて労働保険(労災保険・雇用保険)の手続きが必要になります。
こちらは従業員を雇用した場合のみで、ひとり社長のうちは不要です。
労災保険と雇用保険の対象者の違い(役員は原則対象外)
労災保険は原則としてすべての従業員が対象、雇用保険は週20時間以上勤務などの要件を満たす従業員が対象です(2026年現在)。なお、令和6年の法改正により、2028年10月1日からは雇用保険の加入要件が週10時間以上に広がることが決まっています。短時間のパート・アルバイトを雇う予定がある方は、この改正も見据えておきましょう。
一方、役員は労災保険・雇用保険とも原則として対象外です。「社長も雇用保険に入れる」と誤解しないよう注意してください。
労働保険の期限一覧
従業員を雇った場合の主な期限は次のとおりです(2026年現在)。
労働保険の主な手続きと期限
| 手続き | 提出先 | 期限 |
|---|---|---|
| 労働保険 保険関係成立届 | 労働基準監督署 | 成立の日の翌日から10日以内 |
| 労働保険 概算保険料申告書 | 労働基準監督署 | 保険関係成立の日の翌日から50日以内 |
| 雇用保険 適用事業所設置届 | ハローワーク | 設置の日の翌日から10日以内 |
| 雇用保険 被保険者資格取得届 | ハローワーク | 雇用した月の翌月10日まで |
*スライドすることで表の全てが読めます。
設立と同時に採用する場合は、社会保険の5日以内と労働保険の手続きが重なります。
届出の全体像は、設立後の届出を解説した記事もあわせてご覧ください。
手続きは自分でできる?専門家に頼む場合
電子申請の活用と、つまずきやすいポイント
社会保険の手続きは、e-Gov等の電子申請を使えば自分でも十分対応できます。
つまずきやすいのは、登記事項証明書の取得が間に合わない、役員報酬が未決定で資格取得届の報酬月額を書けない、扶養の届出を忘れる、といった段取りの問題です。
いずれも「設立前からの準備」で防げるものばかりです。
登記スケジュールと役員報酬の決定時期を先に固めておきましょう。
社労士と税理士の役割分担
社会保険手続きの代行は社会保険労務士(社労士)の専門領域です。
一方、保険料の負担は役員報酬の設定で決まり、報酬設計は法人税・所得税と一体の問題のため、「保険料と税金を含めたトータル設計」は税理士の出番です。
当事務所でも、報酬設計のシミュレーションから、必要に応じた社労士との連携までサポートしています。
設立前の段階からご相談いただくのが、最もスムーズです。
まとめ:加入は義務。「5日以内」も「過ぎたら即提出」も鉄則
法人は役員1人でも社会保険の強制適用で、新規適用届と被保険者資格取得届を設立から5日以内に年金事務所へ提出します。
期限を過ぎても受理されるため、気づいたら即提出が鉄則です。放置すると加入指導や遡及加入となる場合があります。
保険料は労使折半で会社負担はおおむね15%程度、負担額は役員報酬の設定しだいです。
手続きと保険料・税金の設計をまとめて整えたい方は、ぜひ税理士にご相談ください。
会社設立後の手続き・役員報酬と保険料の設計のご相談は、ヤマザキ税理士事務所へ
春日部市、越谷市、さいたま市を中心に、会社設立・創業融資・節税対策をサポートする税理士事務所。役員報酬と社会保険料のバランス設計もご相談いただけます。社会保険・労働保険の手続きは社会保険労務士が担当します。初回相談無料です。
よくある質問(FAQ)
Q. 会社設立後、社会保険はいつまでに手続きしますか?
新規適用届・被保険者資格取得届とも、設立(適用事業所に該当した日)から5日以内に年金事務所へ提出するのが原則です(2026年現在)。
全届出の中で最も期限が短いため、登記完了前から準備しておきましょう。
Q. 社会保険の5日の期限を過ぎてしまいました。どうすればよいですか?
期限後でも受理されるため、気づいた時点ですぐに提出してください。
加入日は設立日等に遡り、保険料も遡って発生しますが、速やかに提出すれば実務上は大きな問題にならないことが多いといえます。
Q. 一人社長でも社会保険に加入しなければいけませんか?
はい。法人は従業員の有無にかかわらず強制適用事業所のため、役員報酬を支払うひとり社長でも健康保険・厚生年金に加入します(2026年現在)。
Q. 役員報酬がゼロでも社会保険に入れますか?
入れないのが原則です。報酬ゼロでは保険料を徴収できず、被保険者資格が認められないためです(2026年現在)。
その場合は国民健康保険・国民年金に加入し続けることになります。
Q. 社会保険料の会社負担はどれくらいですか?
保険料は労使折半で、会社負担分は報酬のおおむね15%程度が目安です(2026年現在の目安)。
料率は地域や年度で変わるため、正確な額は加入時に確認してください。
Q. 社会保険料はいつから発生していつ払いますか?
資格取得月(加入月)から発生し、原則として翌月末に口座振替などで納付します(2026年現在)。
初回の引き落としまでに納付資金を用意しておきましょう。
Q. 社会保険に未加入のままだとどうなりますか?
年金事務所からの加入指導や立入検査の対象となり、最大2年程度の遡及加入となる場合があります。
まとまった保険料を一括で求められる事態を避けるため、早めに加入手続きをしてください。
Q. マイクロ法人は売上がなくても社会保険に加入できますか?
売上の有無ではなく、役員報酬を支払っているかどうかがポイントです。
報酬を支払っていれば加入義務があり、加入できます。報酬ゼロの場合は被保険者になれないのが原則です。
Q. 役員は雇用保険に入れますか?
役員は労災保険・雇用保険とも原則として対象外です(2026年現在)。
労働保険はあくまで従業員のための制度と考えてください。
Q. 会社員のまま会社を設立した場合、社会保険はどうなりますか?
自分の法人からも役員報酬を受け取ると、被保険者本人が事実発生から10日以内に二以上事業所勤務届を提出するのが原則です(提出するのは会社ではなく本人です)。
勤務先に知られる経路にもなり得るため、詳しくは会社員の会社設立を解説した記事をご覧ください。
監修者
税理士 山﨑 健司(ヤマザキ税理士事務所)
春日部市、越谷市、さいたま市を中心に、会社設立・創業融資・節税対策をサポートする税理士事務所。中小企業・個人事業主の起業支援に豊富な経験を持つ。




